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バル  作者: 隣の猫
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ヴェリオンド



黒い刃が振り下ろされる。


ガルドは受ける。


重い衝撃。


腕が沈む。


次の瞬間。


二撃目。


受け切れない。


身体ごと弾き飛ばされた。


石床を何度も転がる。


鈍い音が地下神殿へ響く。


ようやく止まり、剣を支えにゆっくりと立ち上がる。


肩から血が流れる。


息も少しずつ荒くなっていた。


それでも剣は離さない。




クロムは追わない。


静かに歩く。


一定の歩幅。


一定の呼吸。


やがてガルドから数歩の場所で足を止めた。


黒い仮面の奥から、静かな声だけが響く。


「終わりだ。」


感情はない。


事実を告げるだけの声。


少しだけ間を置く。


「後悔するがいい。」


さらに一歩。


「フェンリルの継承者以外。」


「ここで全員殺す。」


地下神殿は静まり返っていた。


その言葉だけが、重く残る。




ガルドは何も答えない。


静かに剣を握り直す。


脳裏へ浮かぶ。


ベス。


レオン。


アイラ。


リシア。


ノア。


灰鷹の仲間たち。


二十年前。


守れなかった命。


今度は違う。


今度だけは。


誰一人失わない。




ガルドはゆっくりと視線を動かす。


少し離れた石柱の上。


灰猫が静かにこちらを見つめていた。


何も言わない。


ただ、その金色の瞳だけがガルドを映している。


ガルドは小さく息を吐いた。


「……行け。」


灰猫は尻尾を一度だけ揺らす。


「嫌じゃ。」


短い返事だった。


ガルドは静かに目を閉じる。


そして、もう一度だけ口を開く。


「頼む。」


灰猫はしばらく黙っていた。


やがて、小さく目を細める。


「……もう戻れんぞ。」


その言葉だけだった。


ガルドは小さく笑う。


「ああ。」


「分かっている。」


灰猫は深く息を吐く。


「……面倒じゃ。」


そう呟くと石柱から静かに飛び降り、振り返ることなく神殿の奥へ駆けていった。


ベスたちのもとへ。


その小さな背中を見送りながら、ガルドは静かに呟く。


「……すまん。」




地下神殿に静寂が戻る。


残されたのは二人だけ。


ガルドはゆっくりと剣を下ろした。


胸の奥。


黒い霧が静かに脈打つ。


今まで何度も押さえ込んできた力。


使えば、戻れない。


それでも。


守るためなら。

























ガルドは静かに、その力を受け入れた。

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