セルガス
重い衝撃音が地下神殿を震わせる。
ガルドは剣を振るう。
受ける。
流す。
返す。
その全てへ、黒い刃が迷いなく重なった。
一撃。
また一撃。
受けるたび、腕へ鈍い衝撃が積み重なっていく。
黒い影が視界から消える。
右。
違う。
左。
そこでもない。
背後。
ガルドは振り返ることなく剣を返した。
重い衝撃。
受け止めた。
しかし、その衝撃を支点にクロムの身体が半回転する。
黒い刃が肩口を掠めた。
浅い。
だが、確実に血が滲む。
ガルドは眉一つ動かさない。
そのまま距離を取る。
呼吸は乱れていない。
だが身体は正直だった。
腕が重い。
足も少しずつ遅れ始める。
一歩。
その一歩が、今までより僅かに遅い。
その遅れをクロムは逃さない。
黒い刃が音もなく迫る。
ガルドは受ける。
再び重い衝撃音。
押し返す。
押し返したはずだった。
もう一本。
黒い刃が胸元へ伸びる。
咄嗟に身体を捻る。
刃は外套だけを裂き、そのまま空を切った。
(限界が近い。)
ガルドは静かに悟る。
剣はまだ振れる。
だが、このままでは押し切られる。
再び激突する。
刃が交わる。
衝撃音が地下神殿へ反響する。
今度はガルドが攻める。
一歩。
二歩。
三歩。
連撃。
しかし。
クロムは受け続ける。
崩れない。
揺るがない。
ガルドの剣が止まる、その一瞬を待ち続けているようだった。
そして。
その瞬間は訪れる。
わずかに呼吸が乱れる。
剣先が遅れる。
黒い刃が一直線に走る。
ガルドは受ける。
受け切れない。
身体ごと数歩押し戻された。
石床へ靴底が擦れる音だけが静かに響く。
少し離れた石柱の陰。
灰猫がゆっくりと目を開いた。
その瞳は静かにガルドを見つめている。
ガルドもまた、その視線だけは感じていた。
黒い霧はまだ抑えられている。
だが。
あと一歩押されれば。
使うしかないのか。
その事実だけが、静かに胸へ重くのしかかる。
ガルドはゆっくりと剣を構え直す。
握る手へ力が入る。
その瞬間。
頭の奥で、低い鼓動が響いた。
ドクン。
ドクン。
黒い霧が、
心の奥底から静かに呼びかけてくる。
使え。
その力を。
ガルドは目を閉じることなく、ただクロムだけを見据えた。
次の一撃。
その一撃が、
全てを決めると分かっていた。




