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バル  作者: 隣の猫
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ミルディオン



地下神殿へ重い衝撃音が響く。


ガルドは踏み込む。


速い。


鋭い。


だが。


黒い刃は、そのさらに半歩先にあった。


刃が触れる。


衝撃。


受け流す。


その瞬間には、もう次の斬撃が迫っている。


休む暇がない。




ガルドは受ける。


流す。


返す。


しかし。


返した剣へ、さらに黒い刃が重なる。


一撃では終わらない。


二撃。


三撃。


四撃。


まるで一本の流れとなった剣。


ガルドはその全てを受け続けるしかなかった。




踏み込む。


今度は剣を合わせない。


身体ごと懐へ入る。


肩で崩す。


その瞬間。


黒い刃がわずかに沈む。


(そこだ。)


ガルドは斬る。


しかし。


届かない。


黒い刃はすでに軌道を変え、


ガルドの剣を外へ流していた。


重い衝撃音が地下神殿を震わせる。


ガルドの身体が半歩だけ押し戻された。




止まらない。


クロムは追い詰める。


攻め急がない。


確実に。


一歩ずつ。


間合いだけを奪っていく。


ガルドは気付く。


逃げ道が消えている。


いつの間にか、


自分の立つ場所が少しずつ限定されていた。




剣が閃く。


ガルドは受ける。


だが。


その受けた剣を支点に、


黒い刃が滑る。


肩。


浅い。


次。


腕。


また浅い。


致命傷ではない。


しかし確実に削られていく。


ガルドは表情を変えない。


それでも。


血は静かに石床へ落ちた。




再び踏み込む。


今度こそ。


そう思った瞬間。


黒い刃が目前へ迫る。


受ける。


重い。


押し返す。


押し返したはずだった。


その瞬間。


もう一本の斬撃。


ガルドは身体を捻る。


外套の裾が静かに裂けた。


(速さじゃない。)


(剣が繋がっている。)


一撃一撃ではない。


最初の一太刀から、


最後の一太刀まで。


全てが一本の剣になっていた。




ガルドは静かに息を吐く。


腕が重い。


足も少しずつ鈍くなる。


剣はまだ振れる。


だが。


このままでは。


届かない。


ほんの半歩。


その半歩が、


少しずつ遠くなっていく。




少し離れた石柱の陰。


灰猫は静かに座ったまま、その戦いを見つめていた。


尻尾だけが、小さく揺れる。


何も言わない。


ただ。


























ガルドの剣先が、ほんの僅かに遅れ始めたことだけを見つめていた。

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