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バル  作者: 隣の猫
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オルフィア



キィィィン!!


二本の剣が地下神殿へ澄んだ音を響かせる。


互いに一歩も動かない。


剣と剣。


視線と視線。


静かな鍔迫り合い。


先に動いたのはガルドだった。


力を抜く。


鍔を滑らせる。


そのまま半歩踏み込み、斜め下から斬り上げた。


二十年前から変わらない、最も得意とする一太刀。


しかし。


クロムは迷わなかった。


最小限の動きだけで剣を合わせる。


ガキィン!!


火花が散る。


そのまま自然に剣を流し、ガルドの身体がわずかに泳いだ。


「……。」


ガルドはすぐ体勢を戻す。


今のは偶然じゃない。


完全に読まれていた。




再び間合いを詰める。


今度は速い。


右。


左。


袈裟。


突き。


流れるように剣筋を変え続ける。


クロムは静かだった。


受ける。


流す。


逸らす。


必要最低限の動きだけ。


まるで昔の稽古のように。


「そこ。」


クロムが小さく呟く。


ガルドの剣先が半寸だけ止まる。


その隙へ。


黒い刃が真っ直ぐ差し込まれた。


ギィィン!!


紙一重。


ガルドは剣を返して受け止める。


一歩だけ後退した。




「変わらないな。」


クロムが淡々と口を開く。


「左肩が前へ出る。」


「そこから次は斬り上げ。」


「受けられたら右足で踏み込み直す。」


「全部。」


「昔と同じ。」


感情はない。


ただ事実だけを読み上げる声。


ガルドは何も返さない。


だが胸の奥では理解していた。


(読まれている。)


剣だけじゃない。


身体そのものを。




ガルドは構えを変える。


今までとは逆。


右足を引く。


剣を低く構える。


昔なら決して取らなかった構えだった。


クロムは静かに見つめる。


「変えたか。」


その一言だけ。


次の瞬間。


二人は同時に床を蹴った。


ドン!!


衝撃だけで空気が震える。




ガルドの剣が唸る。


今度は読ませない。


踏み込みも。


呼吸も。


剣筋も。


全て変える。


しかし。


クロムの黒い刃は、その変化へ迷うことなく重なった。


キィィィン!!


また止められる。


ガルドは眉一つ動かさない。


(……そう簡単にはいかんか。)


その瞳だけが、























静かに鋭さを増していった。

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