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エルネリス
地下神殿は静まり返っていた。
黒い石で築かれた長い回廊。
高い天井を支える巨大な石柱。
どれほど昔に造られたのかも分からないその空間には、崩落の跡こそあるものの、神殿そのものは揺るぎなくそこに在り続けていた。
ガルドはゆっくりと歩く。
足音だけが規則正しく反響する。
頭の上では灰猫が丸くなり、尻尾だけをゆっくりと揺らしていた。
「……。」
ガルドは立ち止まる。
空気が変わった。
冷たい。
肌を刺すような殺気ではない。
もっと静かな、底知れない気配だった。
コツ……。
石床を踏む音が一つ。
暗闇の奥から、一人の影が姿を現す。
黒い外套。
黒い仮面。
腰には一本の剣。
歩幅も。
姿勢も。
剣へ添えた手も。
何一つ変わっていなかった。
ガルドは静かにその姿を見据える。
影もまた歩みを止める。
互いの距離、およそ二十歩。
誰も剣を抜かない。
長い沈黙だけが流れた。
やがて。
黒い仮面の奥から声が響く。
「さて。」
静かな声だった。
「答えを聞こうか。」
ガルドは何も言わず目を閉じる。
答えは、もう決まっていた。
ガルドはゆっくりと右手を腰へ添える。
静かな抜刀。
澄んだ音だけが地下神殿へ響き渡る。
その刃は、何より雄弁に答えを示していた。
クロムは小さく頷く。
何も言わず、静かに剣を抜く。




