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バル  作者: 隣の猫
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アディソルス



地下神殿へ重い衝撃音が響く。


キィィィン!!


リシアの氷剣と黒い刃が激しくぶつかる。


先ほどまでとは違う。


虚無の使徒は、もう押されていなかった。


「……。」


静かに一歩下がる。


その仮面へ、


ゆっくりと右手が触れた。


ピシ……


亀裂が軋む。


ズズズ……


黒い霧が仮面の隙間から滲み始めた。




「!」


リシアはすぐ距離を取る。


今までと違う。


嫌な気配だった。


黒い霧は剣ではない。


影でもない。


まるで生き物のように、


虚無の使徒の身体へ絡み付いていく。


ズズズズ……


床へ影が伸びる。


地下神殿そのものが重く軋み始めた。


「まだ……。」


虚無の使徒が小さく呟く。


「耐えろ。」


その声と同時に、


黒い霧は無理やり身体へ押し戻された。




ドォン!!


床が砕ける。


次の瞬間。


虚無の使徒はリシアの目前にいた。


「速……!」


今までとは比べものにならない。


氷で踏み込みを逃がしても、


その上から力で押し切ってくる。


ギィィィン!!


リシアは受け流す。


しかし。


流し切れない。


重い。


腕へ衝撃が走る。


身体ごと後ろへ滑った。




止まらない。


黒い刃が二撃。


三撃。


四撃。


息を吐く暇もない。


氷の床を利用して間合いを変える。


長剣。


短剣。


形を変える。


それでも。


今度は追い付かれる。


「っ!」


肩を掠める。


脇腹。


太腿。


浅い。


だが確実に傷が増えていく。




リシアは歯を食いしばる。


(まだ。)


(止まれない。)


白銀の魔力を流す。


加護が身体を支える。


だが。


その代償も確実に積み重なっていた。


腕が重い。


呼吸が乱れる。


視界が少しずつ霞み始める。




その時。


地下神殿の奥から、


パキィィィン!!


乾いた破砕音が響いた。


アイラの戦場。


リシアは振り返らない。


それでも胸の奥で小さく笑う。


(……決めましたね。)


仲間を信じる。


だから。


自分も倒れない。


しかし。


目の前の虚無の使徒は、


黒い霧をさらに濃くまとい、


ゆっくりと剣を構え直した。


人外の圧力が、























再び地下神殿を満たしていく。

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