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バル  作者: 隣の猫
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アヴィレ



ギィィィン!!


地下神殿へ激しい金属音が響く。


黒い刃と氷の剣がぶつかる。


虚無の使徒は一歩も退かない。


圧倒的な腕力。


圧倒的な速さ。


人外の一撃が石床を砕き、衝撃だけで床へ新たな亀裂が走った。


だが。


リシアも退かなかった。




両手へ白銀の魔力が集まる。


左手の氷剣が伸びる。


長剣。


その一撃を受け止めた瞬間。


右手の氷剣は霧のように砕け、


次の瞬間には短剣となって虚無の使徒の懐へ滑り込む。


キィィン!!


虚無の使徒は咄嗟に受ける。


だが。


その時には、もう逆だった。


右手が長剣。


左手が短剣。


持ち替えたのではない。


氷そのものが形を変えていた。


「……。」


虚無の使徒が初めて目を細める。




リシアは舞う。


右でもない。


左でもない。


両手が等しく刃となる。


治療師だった頃、


両手は同じように動いていた。


その癖は、


そのまま剣となっていた。


長剣が間合いを支配する。


次の瞬間には短剣となり、


死角へ潜り込む。


どちらが本命か。


どちらが囮か。


その境界すら存在しない。




パキッ……


リシアが踏み込むたび、


床へ薄い氷が広がる。


虚無の使徒は力強く踏み込む。


だが。


踏ん張った足が僅かに流れる。


力はある。


速さもある。


それでも。


床がその力を逃がす。


「今。」


その一瞬だけを狙い、


右の長剣が振り下ろされる。


受ける。


同時に。


左の短剣が真下から跳ね上がる。


虚無の使徒は身体を捻って避ける。


しかし。


今度は逆。


左が長剣。


右が短剣。


間合いが一瞬で変わる。


「……っ!」


黒い外套が裂ける。


初めて、


虚無の使徒が一歩だけ後ろへ下がった。




だが。


そこで終わらない。


虚無の使徒は真正面から踏み込む。


圧倒的な腕力。


リシアは受けない。


身体を半回転。


滑るように虚無の使徒の横を抜ける。


その勢いのまま、


長剣となった氷剣が背後から走る。


キィィィン!!


黒い刃が辛うじて受け止める。


衝撃で石床が砕け散った。


互角。


いや。


ほんの僅かだけ、


リシアが押していた。




その時だった。


遠くの回廊から、


ドォォォン!!


重い衝撃音が地下神殿へ響く。


石壁を伝って震動が走る。


レオンの戦場。


リシアは振り返らない。


それでも分かった。


(決めたんですね。)


小さく口元が緩む。


仲間を信じる。


だから。


自分も目の前だけを見る。


両手の氷剣が再び静かに輝く。


長剣。


短剣。


その形は、






















もう決して決まってはいなかった。

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