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バル  作者: 隣の猫
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247/404

ヴィア



地下神殿へ静かな剣戟が響く。


キィィィン!!


細身の剣と黒い刃がぶつかる。


火花が散る。


だが、その音だけが不思議と静かだった。


リシアは舞う。


一歩。


半歩。


床を滑るように間合いを変える。


足元へ淡い白銀の魔力が広がった。


パキ……。


石床が薄く凍り始める。




虚無の使徒が踏み込む。


速い。


重い。


人外の脚力が石床を砕きながら一直線に迫る。


ギィィン!!


リシアは正面から受ける。


押し返そうとはしない。


刃を僅かに傾ける。


力を受け流す。


その瞬間。


踏み込んだ虚無の使徒の足が、凍った床でほんの僅かに滑る。


踏ん張れない。


力はある。


だが。


その力を乗せ切れない。


「……。」


リシアは静かに身体を流す。


大きな一撃は空を切った。




その隙へ。


細身の剣が閃く。


カキィン!!


虚無の使徒は受ける。


重い衝撃。


だが今度はリシアが押し返す。


力ではない。


滑る床。


崩れた重心。


その全てを利用していた。


虚無の使徒は半歩だけ後退する。


初めてだった。




リシアは追わない。


再び位置を変える。


踏み込むたび、


氷が静かに広がっていく。


自分の足元だけは滑らない。


加護が作り出す氷は、


彼女だけを受け入れていた。


一方、


虚無の使徒は踏み込むたびに、


ほんの一瞬だけ力を逃がされる。


その一瞬を、


リシアは決して見逃さない。




キィィィン!!


再び激突。


今度は真正面。


虚無の使徒は圧倒的な腕力で押し潰そうとする。


リシアは受ける。


そのまま身体を半歩だけ沈めた。


力を殺す。


流す。


相手の重さを利用し、


氷の上を滑るように横へ抜ける。


虚無の使徒の剣だけが石床を叩き、


轟音と共に床が砕けた。


「力は強い。」


リシアは静かに呟く。


「だからこそ、真っ直ぐには受けません。」




地下神殿には、


氷を踏む澄んだ音だけが響く。


治療師として培った観察眼。


加護が与えた氷。


そして、


人を守るために磨き続けた剣。


三つが一つとなり、


リシアは初めて人外と互角以上に渡り合っていた。


だが。


虚無の使徒はまだ崩れない。


仮面の奥から静かな視線だけを向け、


再び深く腰を落とした。


次の一撃は、


今までよりもさらに重くなる。























リシアも静かに剣を構え直した。

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