表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バル  作者: 隣の猫
PR
246/417

マグネス



ヒュン――。


三本目の矢が放たれる。


真っ直ぐ。


迷いなく。


虚無の使徒は黒い霧をさらに膨れ上がらせた。


ズズズズズ……


地下神殿を満たすほどの黒い霧。


人外の力。


本来なら、人の技など容易く飲み込む絶対の力だった。


だが。


仮面へ走った新たな亀裂は、


その力を完全には支え切れない。


黒い霧が僅かに揺らぐ。


ほんの一瞬。


本当に一瞬だけ。


アイラは、その瞬間だけを待っていた。




「今。」


矢が風へ溶け込む。


黒い霧を避けるように、


風だけを辿って軌道を変える。


虚無の使徒は初めて追う。


だが。


見失う。


風そのものへ溶けた矢は、


もう視界には映っていなかった。


次の瞬間。


パキィィィン!!


乾いた音が地下神殿へ響く。


矢は、


仮面のヒビだけを正確に射抜いていた。




仮面が砕ける。


黒い霧が制御を失う。


ズズズズズッ!!


暴れ狂う人外の力が、


虚無の使徒自身を飲み込み始めた。


虚無の使徒は咄嗟に押さえ込もうとする。


しかし。


もう遅い。


黒い霧は静かに崩れ、


虚無の使徒の身体も、


闇へ溶けるように消えていく。




アイラはゆっくりと弓を下ろした。


その瞬間。


張り詰めていた意識が一気に途切れる。


視界が揺れる。


膝が震える。


目尻から流れていた血が頬を伝い、


石床へ赤い雫を落とした。


「……っ。」


思わず片膝をつく。


肩で息をする。


これほど集中したのは初めてだった。


代償は小さくない。


それでも。


口元には、ほんの少しだけ笑みが浮かんでいた。


「……勝った。」


地下神殿へ、




















静かな風が吹き抜けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ