シアル
キィィィン!!
地下神殿へ重い金属音が響く。
レオンの大剣。
虚無の使徒の二本の短剣。
何度ぶつかっても、決着はつかない。
「はぁっ!」
レオンが踏み込む。
大剣が唸る。
ガギィィン!!
虚無の使徒はいつものように片手で受け止める。
そして。
空いたもう片方の短剣が肩を裂いた。
「ぐっ!」
血が飛ぶ。
レオンは後ろへ飛び退く。
「またか……。」
何度やっても同じだった。
止める。
受けさせる。
そこまではいい。
だが。
止めた瞬間には、
もう片方の短剣が飛んでくる。
「ちっ。」
肩で息をする。
(止めるだけじゃ駄目だ。)
その考えだけが、頭の中を巡る。
ヒュンッ!!
上階からアイラの矢。
虚無の使徒が半歩だけ流れる。
「今!」
レオンが踏み込む。
ガギィィン!!
大剣がぶつかる。
虚無の使徒は片手で受ける。
そのままもう片方の短剣が――
「……。」
動かない。
ほんの一瞬。
レオンは気付いた。
今。
片手だけでは押されている。
次の瞬間。
虚無の使徒はもう片方の短剣も添えた。
両手。
初めてだった。
「そうか。」
レオンの口元がゆっくりと上がる。
「そういうことか。」
ガルドの言葉が頭をよぎる。
『止めろ。』
あの時は、その意味しか分からなかった。
だが今は違う。
止めるだけじゃない。
逃がさない。
押し返させない。
押し続ける。
「押し留める……。」
自然と言葉が漏れた。
その瞬間。
全てが一本へ繋がる。
レオンは静かに大剣を構え直した。
深く息を吸う。
床を蹴る。
「うおおおおっ!!」
全身を乗せた一撃。
ガギィィィィン!!
虚無の使徒は片手で受ける。
だが。
止まらない。
「……!」
初めて仮面の奥の目が揺れた。
もう片方の短剣も添える。
両手。
レオンはさらに踏み込む。
腕。
肩。
腰。
脚。
全ての力を大剣へ乗せる。
「まだだぁぁぁ!!」
ガギギギギギ……
虚無の使徒の足元が床を削る。
石が砕ける。
一歩。
また一歩。
押される。
「……!」
地下神殿が震えた。
ズズズ……
二人の足元がゆっくりと沈み始める。
石床が耐え切れず、大きく陥没した。
レオンは叫ぶ。
「逃がすか!!」
さらに押し込む。
虚無の使徒は初めて、
完全に両手で大剣を受け止めるしかなくなった。
ガギギギギ……
地面はさらに深く沈む。
その瞬間。
レオンは笑った。
「捕まえた。」
虚無の使徒の身体が、
わずかに力を逃がそうと動いた。




