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バル  作者: 隣の猫
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239/404

グロッサリア



ヒュンッ!!


アイラの矢が風を裂く。


速い虚無の使徒は反射的に身を捻る。


だが。


そこへもう一本。


ヒュッ!!


避けた先へ矢が現れる。


「……!」


虚無の使徒の動きが初めて止まった。


ほんの一瞬。


それだけで十分だった。




「レオン!」


アイラの声が神殿へ響く。


「右!」


レオンは迷わない。


大剣を振るう。


ガギィィン!!


虚無の使徒は受け止める。


その横から。


リシア。


二刀が黒い短剣を弾き、わずかに体勢を崩す。


三人の呼吸が一つになる。




「そこ!」


アイラは次の矢を放つ。


ヒュッ!!


速い虚無の使徒が避ける。


しかし。


もう逃げ道は見えていた。


一本。


二本。


三本。


矢は敵を狙わない。


風を射る。


逃げる場所を射る。


「……。」


虚無の使徒の足が止まる。


初めて。


完全に動きを読まれていた。




レオンは思わず笑う。


「すげぇな。」


「全部見えてんのか。」


上階からアイラは小さく答える。


「見えてる。」


「だから。」


「止めて。」


「任せろ!」




レオンが踏み込む。


大剣が唸る。


ガギィィン!!


虚無の使徒は片手で受ける。


だが。


その瞬間。


リシアがもう一人を止める。


キィィン!!


二刀が舞う。


アイラの矢が最後の一人を遠ざける。


三人。


初めて。


それぞれの相手を完全に分断することができた。




速い虚無の使徒は静かにアイラを見上げた。


仮面のヒビから、掠れた声が漏れる。


「……目。」


アイラは静かに弓を構えたまま答える。


「そう。」


「もう見えてる。」


虚無の使徒はそれ以上何も言わない。


ただ剣を握り直す。


レオンも大剣を肩へ担ぐ。


「ようやく。」


「一対一だ。」


その目は、もう迷っていなかった。


戦場は整った。


それぞれが辿り着いた力で、
























ついに反撃の幕が上がる。

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