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バル  作者: 隣の猫
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サラヴィア



ヒュンッ!!


矢はまた避けられた。


速い虚無の使徒。


上位の虚無の使徒。


何度狙っても届かない。


「くっ……。」


アイラは歯を食いしばる。


地下ではレオンとリシアが懸命に戦っている。


二人とも限界が近い。


それなのに。


自分の矢は、一番止めたい敵へ届かない。




「私には弓しかない……。」


小さく漏れた言葉。


その瞬間だった。


違う。


胸の奥から、誰かの声が聞こえた気がした。


(違う。)


アイラはゆっくりと目を閉じる。


レオンは新しい戦い方を掴もうとしている。


リシアは誰かを守るための剣を手に入れた。


二人とも前へ進んでいる。


なら。


自分も。


「弓しかないんじゃない。」


ゆっくりと目を開く。


「弓しかいらない。」




深く息を吸う。


長く吐く。


その瞬間。


神殿から音が消えた。


剣戟。


咆哮。


叫び声。


全てが遠ざかる。


世界から色も消えた。


白。


黒。


灰色。


その中で。


風だけが流れていた。




見える。


矢が通る風。


石柱へぶつかって返る風。


地下を吹き抜ける風。


虚無の使徒の衣を揺らす風。


その全てが一本の線になって見えた。


そして。


速い虚無の使徒。


今まで見えなかった足運び。


重心。


呼吸。


視線。


全てが、はっきりと見える。


「……捕まえた。」


目の端から、一筋の血が流れ落ちた。


それでも。


視線は逸らさない。




ヒュッ!!


一本目。


矢は虚無の使徒の進路ではなく、


その先の風へ突き刺さる。


虚無の使徒の身体がわずかに流れる。


「!」


初めてだった。


速い虚無の使徒の動きが乱れる。


続けて二本目。


ヒュンッ!!


さらに風が変わる。


逃げ道が消える。


地下で戦うレオンが目を見開いた。


「動きが……!」


リシアも驚く。


「変わった!」


アイラは静かに三本目を番える。


「もう。」


「逃がさない。」


空高く舞う鷹が、


獲物を見失わないように。


アイラの瞳は、






















ついに人外の速さを完全に捉えていた。

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