エルアノス
地下神殿へ剣戟が響き渡る。
レオンとリシア。
二人は肩を並べ、三人の虚無の使徒と激しく渡り合っていた。
上階。
アイラは静かに弓を引く。
ヒュンッ!!
誘導の矢が風を裂く。
二刀の虚無の使徒が反射的に身を逸らす。
「今!」
レオンの大剣が唸る。
誘導された先へ踏み込み、重い一撃を叩き込む。
ガギィィン!!
二刀の虚無の使徒は受け止めるしかない。
(通る。)
アイラは小さく息を吐く。
レオンの相手には、まだ誘導が通じる。
その時だった。
「リシア!」
レオンが叫ぶ。
「見てろ!」
腰へ差していた一本の小剣を抜く。
右手に大剣。
左手に小剣。
「俺も二刀流だ!!」
「えっ!?」
リシアの目が丸くなる。
「ちょっと待っ――」
レオンはそのまま突っ込んだ。
ガンッ!!
自分の大剣へ小剣をぶつける。
「うわっ!」
一瞬で体勢が崩れた。
「レオン!」
黒い短剣が一直線に迫る。
リシアが飛び込む。
キィィィン!!
二刀が交差し、黒い刃を受け流した。
同時に。
ヒュン!!
アイラの矢。
レオンへ迫るもう一人の虚無の使徒の進路を逸らす。
レオンは慌てて後ろへ転がった。
リシアが怒鳴る。
「こんな時に何してるの!」
レオンは頭を掻きながら苦笑する。
「悪ぃ!」
上階からアイラも声を飛ばす。
「遊んでる場合じゃない!」
「遊んでねぇよ!」
「だったらちゃんと戦え!」
「はいはい!」
レオンは肩をすくめ、小剣を腰へ戻した。
「……難しいな。」
大剣を握り直し、再び虚無の使徒へ踏み込んでいく。
その姿を見ながら。
アイラは静かに息を吐いた。
(本当に馬鹿。)
思わず苦笑する。
でも。
その笑顔はすぐに消えた。
レオンは失敗した。
それでも挑戦した。
リシアも知らない間に、新しい力を手にしていた。
二人とも前へ進んでいる。
(私は……。)
もう一本、矢を番える。
ヒュン!!
狙うのは速い虚無の使徒。
しかし。
届く前に避けられた。
続けて放つ。
上位の虚無の使徒。
最小限の動きだけで躱される。
(また……。)
二刀の虚無の使徒には通る。
でも。
速い相手には届かない。
上位には届かない。
何本放っても同じだった。
アイラは強く弓を握る。
「私には……。」
小さく呟く。
「私には弓しかない。」
その言葉だけが、
胸の奥へ静かに沈んでいった。




