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バル  作者: 隣の猫
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236/436

カルミ



ゴンッ!!


レオンを蹴り飛ばした反動で、アイラはその場へ膝をついた。


まだ身体は重い。


息も荒い。


それでも弓だけは離さなかった。


ゆっくりと地下を見下ろく。


「……リシア。」


思わず息を呑む。


右手には細身の剣。


左手には白銀の氷剣。


二振りの刃が舞うように閃き、三人の虚無の使徒を相手に一歩も退かず捌き続けている。


(何が……あったの。)


さっきまでのリシアじゃない。


見たことのない剣。


見たことのない戦い方。


聞きたい。


どうしてそうなったのか。


でも。


今は戦いの最中だった。


アイラは静かに弓を構える。


「援護する。」




地下ではレオンがリシアへ合流した。


二人が並び、虚無の使徒へ斬り込む。


アイラは静かに弦を引いた。


ヒュンッ!!


誘導の矢が大きく弧を描く。


狙うのは、レオンと戦う二刀の虚無の使徒。


虚無の使徒は反射的に身を逸らす。


「今!」


レオンの大剣が唸る。


誘導の矢で逃げ道を塞がれた虚無の使徒は受け止めるしかない。


(よし。)


通じる。


二刀の虚無の使徒には、まだ誘導が効く。




すぐに狙いを変える。


速い虚無の使徒。


ヒュッ!!


矢が風を裂く。


しかし。


届く前にもういない。


黒い影は一瞬で軌道を変え、矢は虚しく石床へ突き刺さった。


「……っ。」


もう一本。


今度は上位の虚無の使徒。


逃げ道を読む。


誘導する。


だが。


最小限の動きだけで躱された。


まるで。


最初から矢道が見えているかのようだった。




一本。


また一本。


二刀の虚無の使徒には通じる。


だが。


速い虚無の使徒。


上位の虚無の使徒。


その二人だけは違う。


読めない。


捕らえられない。


「どうして……。」


地下ではレオンとリシアが必死に戦っている。


それでも、あの二人だけは止められない。


アイラは強く唇を噛んだ。


(まだ足りない。)























胸の奥で、小さな焦りだけが静かに膨らみ始めていた。

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