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バル  作者: 隣の猫
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232/406

フェルナブィ



遅れた。


たった、それだけだった。


黒い刃が目前まで迫る。


避けられない。


そう悟った瞬間。


世界から音が消えた。




剣が止まる。


砂が止まる。


舞い落ちていた小さな砂粒さえ、


空中で静かに止まって見えた。


黒い刃だけが、


ゆっくりと自分の胸へ近付いてくる。


(……死ぬ。)


不思議と恐怖はなかった。


頭へ浮かんだのは、


仲間たちの顔だった。




焚き火を囲んで笑った夜。


レオンが大笑いしていた。


アイラが呆れたようにため息をつく。


ベスが照れくさそうに笑う。


ノアが楽しそうに猫に話し続ける。


少し離れた場所では、


ガルドが腕を組みながら静かにその様子を眺めていた。


あの時間が好きだった。


何気ない毎日が、


何よりも大切だった。




景色が変わる。


雪。


白い大地。


北の大陸。


吹雪の中を歩いていた。


北の神殿。


静かな足音。


白銀の毛並み。


一匹の狐が、


自分の前まで歩いてくる。


優しい瞳。


何も言わず、


そっと鼻先を差し出してきた。


リシアも笑って手を伸ばす。


鼻先へ触れる。


ふわりと温かな温もりが掌へ伝わった。




さらに遠い記憶。


幼い頃。


病床で横になる母。


優しく笑う父。


「リシア。」


「あなたは優しい子だから。」


「きっと誰かを助けられる。」


薬草の香り。


温かな手。


二人は病で、この世を去った。


だから。


人を救える治療師になろうと決めた。




再び狐が現れる。


白い雪原。


静かな風。


狐は穏やかに微笑んでいた。


「……ようやく。」


その声だけが、


静かに胸へ響く。


リシアは小さく頷いた。


「うん。」


「まだ。」


「みんなを守りたい。」


その瞬間。


狐の身体が、

























眩い白銀の光へ包まれた。

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