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バル  作者: 隣の猫
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231/404

ルネス



レオンは上階へ吹き飛ばされた。


アイラもまた、その後を追うように蹴り飛ばされた。


地下神殿へ残されたのは、リシア一人。


そして。


三人の虚無の使徒だった。


静寂。


誰も口を開かない。


聞こえるのは、自分の呼吸だけ。


「……。」


リシアは細身の剣を静かに構えた。




最初に動いたのは右。


黒い影が床を滑る。


速い。


キィィン!!


剣がぶつかる。


止める。


受け流す。


その瞬間。


左。


さらに正面。


三方向。


「っ!」


身体を捻る。


避ける。


流す。


止める。


息を吐く暇すら与えられない。




三人は決して同じ場所へ立たない。


一人が攻める。


一人が死角へ回る。


最後の一人が逃げ道を塞ぐ。


「はぁ……!」


リシアは一歩下がる。


その足音を追うように、


三人も一歩前へ出る。


距離は決して開かない。




キィィィン!!


火花が散る。


細身の剣が震える。


重い。


腕が軋む。


押し返せない。


それでも剣は離さない。


「まだ……。」


小さく息を吐く。


誰かを倒すための剣じゃない。


誰かを生かすための剣。


それだけを信じて、


何度も。


何度も。


刃を合わせ続ける。




黒い刃が肩を掠めた。


赤い線が走る。


次は脇腹。


浅い。


だが確実に血が滲む。


さらに太腿。


動きがわずかに鈍る。


それでも。


致命傷だけは避け続ける。


まるで相手は、


リシアが倒れる瞬間を楽しむように、


少しずつ命を削っていた。




キィィィン!!


剣戟が地下神殿へ何度も反響する。


その振動で、天井の継ぎ目から細かな砂がぱらぱらと舞い落ちた。


リシアの呼吸は乱れ始める。


肩が重い。


足も思うように動かない。


それでも。


止まるわけにはいかなかった。




(時間を。)


(少しでも。)


(みんなが戻るまで。)


その想いだけが身体を動かしていた。


一歩。


また一歩。


黒い刃を受け流す。


しかし。


限界は近付いていた。




三人の虚無の使徒が、同時に踏み込む。


右。


左。


正面。


今までで最も速い。


リシアは剣を構える。


身体は動く。


だが。


足が、ほんのわずかに遅れた。


その小さな遅れが、
























決定的な隙となった。

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