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バル  作者: 隣の猫
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229/404

アスリディ



深く腰を落とした虚無の使徒。


レオンは大剣を握り直す。


嫌な予感がした。


「来るぞ!」


次の瞬間だった。


ドォン!!


石床が爆ぜる。


黒い影が一直線にレオンへ迫った。


「速ぇ!」


レオンも正面から踏み込む。


大剣を振り抜く。


ガギィィィン!!


激しい衝撃。


今までとは違う。


大剣を受け止めた瞬間、


虚無の使徒はそのまま前へ出た。


止めるのではない。


押し込んでくる。


「ぐっ……!」


レオンは歯を食いしばる。


足が滑る。


石床へ深い靴跡が刻まれた。


「レオン!」


アイラが矢を放つ。


狙うのは敵ではない。


退路。


誘導。


しかし。


虚無の使徒は矢を見ない。


レオンだけを見る。


「……。」


静かな視線。


そのまま右手だけで大剣を押さえ込み、


左手の短剣が静かに動く。


「っ!」


ギィィン!!


リシアの剣が割って入る。


火花が散る。


「ありがとうございます!」


「まだ!」


リシアはそのまま身体を捻る。


だが。


三人目の虚無の使徒は、その隙を待っていた。


一瞬でアイラとの距離を詰める。


「アイラ!」


アイラは後ろへ跳ぶ。


放つ。


一本。


二本。


三本。


誘導。


すべて。


虚無の使徒は最短距離だけを選び、


一度もその道へ乗らない。


「そんな……。」


アイラの額へ汗が滲む。


(通じない。)


(私の弓が……。)


その僅かな迷い。


虚無の使徒は見逃さなかった。


黒い影が再びレオンへ迫る。


レオンは大剣を構える。


「今度こそ!」


全身へ力を込める。


床が軋む。


押し返す。


その瞬間。


虚無の使徒の口元が、


初めてわずかに動いた。


右手で大剣を押さえたまま、


身体を半回転させる。


そして。


ドォォン!!


鋭い回し蹴りがレオンの脇腹へ突き刺さった。


「がっ……!」


息が止まる。


身体が宙へ浮く。


そのまま一直線に吹き飛ばされた。


バギィィン!!


石柱を砕く。


さらに壁へ激突する。


轟音と共に石壁が崩れ落ちる。


「レオン!!」


リシアの叫びが地下神殿へ響いた。


レオンの姿は、


砕けた壁の向こう――























上階へ消えていった。

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