シオンス
「……確認しました。」
中央の虚無の使徒が静かに呟く。
その一言だけだった。
だが。
地下神殿の空気が変わる。
レオンは思わず眉をひそめた。
「何だ……?」
返事はない。
三人の虚無の使徒は、それぞれ一歩だけ前へ出る。
今までのように並んではいない。
互いの距離を取り、
まるで最初から役割が決まっていたかのように散開した。
「来る!」
レオンが叫ぶ。
その瞬間だった。
黒い影が一直線に飛び込んでくる。
「速っ!」
レオンは反射的に大剣を振るう。
キィィィン!!
重い衝撃。
剣は止まった。
いや。
止められた。
虚無の使徒は右手に持った短剣一本だけで、大剣を受け止めていた。
「何……!」
レオンが力を込める。
押し返す。
だが微動だにしない。
その時。
左手の短剣が閃いた。
「っ!」
咄嗟に身体を捻る。
鎧の肩が浅く裂けた。
血が飛ぶ。
「レオン!」
リシアが駆ける。
だが。
その前へ別の黒い影が割り込んだ。
「なっ!」
アイラは反射的に矢を放つ。
ヒュンッ!!
矢は一直線。
今までなら読めていた。
しかし。
敵はもうそこにいない。
「消え……。」
言い終わる前に。
黒い影が柱の横へ現れる。
速い。
見えない。
もう一射。
放つ。
避けられる。
三射。
四射。
すべて空を切った。
「そんな……。」
アイラの観察眼でも追えなかった。
その速度は、
今まで戦ってきた虚無の使徒とは別格だった。
「アイラ!」
リシアが叫ぶ。
三人目の虚無の使徒が、
いつの間にかアイラの背後へ立っていた。
しかし。
次の瞬間。
その黒い刃はアイラではなく、
レオンへ向かって振り下ろされる。
「しまっ!」
リシアが飛び込む。
細身の剣で受ける。
キィィィン!!
衝撃。
腕が痺れる。
身体ごと弾き飛ばされそうになる。
それでも離さない。
「皆さんには……。」
「触れさせません!」
リシアは必死に踏み止まる。
その隙にレオンとアイラが距離を取った。
三人は再び背中を合わせる。
誰も喋らない。
一瞬で理解した。
さっきまでとは違う。
敵は三人。
それぞれ戦い方が違う。
しかも。
三人が互いを補い合っている。
レオンは血の滲む肩を押さえながら苦笑した。
「ようやく。」
「本気ってわけか。」
中央の虚無の使徒は静かに頷く。
短剣二刀の虚無の使徒が、
再びレオンへ一直線に踏み込んできた。




