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バル  作者: 隣の猫
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224/410

ノクシアル



三人の虚無の使徒は微動だにしなかった。


黒い仮面の奥から、静かな視線だけがレオンたちへ向けられている。


その視線には敵意も怒りもない。


まるで、そこに立っている三人を一つの存在として見つめているようだった。


地下神殿は静まり返る。


石柱の隙間を抜ける風だけが、小さく音を立てていた。


やがて中央の虚無の使徒が口を開く。


「フェンリルの継承者しか。」


少し間を置く。


「この場所へは呼んでいません。」


右に立つ虚無の使徒が続ける。


「あなた方は不要です。」


左の虚無の使徒も、寸分違わぬ声で告げる。


「今。」


「世界は本来の姿を取り戻しています。」


「その景色を。」


「その風を。」


「その匂いを。」


三人の声が一つになる。


「静かに享受しなさい。」


命令ではなかった。


脅しでもない。


本気で、それが正しいと信じている声だった。


レオンは鼻で笑う。


「寝ぼけたこと言ってんじゃねぇ。」


大剣を肩へ担ぎ直し、一歩前へ出る。


「誰がお前らの許可なんかもらうか。」


地下神殿へ、その声が響く。


「この先には仲間がいる。」


「団長も。」


「ベスも。」


「俺たちは、あいつらの所へ行く。」


「そのためなら。」


剣をゆっくりと構える。


「誰が相手でも退かねぇ。」


アイラも静かに矢を番えた。


「止まる理由はありません。」


「私たちは進みます。」


リシアも細身の剣を抜く。


「道を譲っていただけるなら助かります。」


一呼吸置き、小さく微笑む。


「……譲る気がないことは、分かっていますけど。」


三人の虚無の使徒は静かに頷いた。


「理解できません。」


「理解する必要もありません。」


「あなた方は。」


「ここで終わります。」


その言葉と同時に。


三人がゆっくりと黒い剣を抜く。


地下神殿の空気が一変した。


レオンは大剣を握り締める。


「行くぞ!」


その一声で十分だった。


アイラの指が弦へ掛かる。


リシアが半歩だけ前へ出る。


次の瞬間――























三人の虚無の使徒が、同時に床を蹴った。

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