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バル  作者: 隣の猫
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ヴァルメア



冷たい石床の感触が、ゆっくりと意識を引き戻した。


「……っ。」


レオンはゆっくりと目を開ける。


全身が重い。


腕も足も鉛のようだった。


ゆっくり身体を起こす。


目の前には崩れ落ちた黒い石柱。


天井から落ちた瓦礫。


砂埃が薄く漂っている。


神殿崩壊の衝撃が、どれほど凄まじかったのかを物語っていた。


「……生きてるか。」


思わず苦笑する。


あれだけ派手に落ちて、生きている自分たちの方がおかしい。


「アイラ!」


声を張る。


静かな地下神殿へ反響していく。


「ここです。」


すぐに返事が返ってきた。


レオンは胸を撫で下ろす。


瓦礫の向こうからアイラが姿を現す。


額には小さな傷。


だが歩き方はしっかりしている。


「リシア!」


「はい。」


今度は反対側から声がした。


リシアも無事だった。


服は所々破れ、腕には擦り傷が見える。


それでも穏やかな笑みは変わらない。


三人は自然と顔を見合わせ、小さく笑った。


誰も欠けていない。


それだけで十分だった。




「団長やベス、他のみんなは?」


レオンが辺りを見回す。


返事はない。


周囲には崩れた通路が幾つも伸びていた。


神殿は落下の衝撃で、完全に分断されているようだった。


アイラが静かに床を観察する。


「落下の途中で別方向へ飛ばされたのでしょう。」


「この崩れ方を見る限り、一本道ではありません。」


レオンは大剣を肩へ担ぐ。


「なら探すしかねぇ。」


リシアも静かに頷いた。


「きっと大丈夫です。」


「ベスや、団長、みんなも。亅


レオンは鼻で笑う。


「あいつらが簡単に死ぬかよ。」


その一言だけで、不思議と不安は薄れた。




三人は地下神殿を歩き始める。


黒い石で築かれた巨大な回廊。


高い天井。


等間隔に並ぶ柱。


静まり返った空間には、自分たちの足音だけが響いていた。


時折、遠くで石が崩れる音が聞こえる。


神殿は今も少しずつ姿を変えているのだろう。


「嫌な静けさですね。」


リシアが小さく呟く。


レオンも同じことを感じていた。


魔物がいない。


気配がない。


それが、かえって不気味だった。




しばらく進んだ、その時。


アイラが突然足を止めた。


「……待って。」


声は小さい。


だが緊張が滲んでいた。


レオンもすぐ剣へ手を掛ける。


「どうした。」


アイラは正面の暗闇を見つめたまま答える。


「誰かいます。」


その言葉と同時に。


コツン。


静かな足音が響いた。


暗闇の奥から、一つ。


また一つ。


ゆっくりと三つの黒い影が姿を現す。


黒い外套。


黒い仮面。


虚無の使徒。


三人。


誰も剣を抜かない。


誰も言葉を発さない。


ただ静かに、互いを見つめ合っていた。
























地下神殿の空気が、ゆっくりと張り詰めていく。

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