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バル  作者: 隣の猫
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エルディス



ゴゴゴゴゴゴ……。


神殿全体が唸りを上げる。


天井が大きく沈み、


壁という壁に無数の亀裂が走っていく。


もう限界だった。


ベスは静かに剣を納める。


肩まで覆っていた白銀の装甲がゆっくりと消え、


巨大な狼の前脚も銀色の魔力となって左腕へ吸い込まれていく。


神殿は、もう戦わせてはくれなかった。




「みんな……!」


ベスは瓦礫を飛び越えながら走り出す。


ガルドたちと合流する。


その一心だけだった。


崩れ落ちる石柱。


砕け散る壁。


落下する瓦礫を避けながら神殿を駆け抜ける。


遠くから剣戟はもう聞こえない。


戦いは終わった。


そう信じていた。




広間へ飛び込んだ、その瞬間。


「ベス!」


ノアの声だった。


振り返る。


崩れ始めた床の向こう側。


ガルド。


レオン。


アイラ。


リシア。


全員がこちらを見ていた。


その表情が一瞬だけ安堵へ変わる。


生きていた。


その事実だけで十分だった。




しかし。


次の瞬間。


バキィィィン!!


神殿の中央を巨大な亀裂が貫く。


床が大きく沈む。


「離れろ!!」


ガルドの叫びが響く。


誰もが走る。


だが。


間に合わない。




ノアの足元が崩れた。


「きゃっ!」


小さな身体が宙へ投げ出される。


考えるより先だった。


ベスは跳んでいた。


瓦礫を蹴る。


砕けた床を飛び越える。


伸ばした右手が、


ノアの腕を掴む。


そのまま強く抱き寄せた。


「大丈夫だ。」


ノアは小さく頷き、


ベスの服をぎゅっと握り締める。




その時だった。


「ベス!!」


レオンが叫ぶ。


足元を見る。


自分の立つ床にも、


巨大な亀裂が走っていた。


逃げ場はない。


神殿全体が崩れ始める。




ガルドは瞬時に周囲を見渡す。


猫は頭の上ではなく、


ノアの近くにいた。


灰猫はベスへ一瞬だけ視線を向ける。


そして。


迷わずガルドの肩へ飛び移った。


「行くぞ!」


ガルドは猫を受け止めた、その瞬間。


足元が完全に崩壊する。




轟音。


床が砕ける。


光が消える。


全員の身体が、


奈落へ吸い込まれていく。


ベスはノアを強く抱き締めた。


腕の中だけは、


何があっても離さない。


暗闇がすべてを飲み込む。


そして――。

















世界は静寂に包まれた。

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