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バル  作者: 隣の猫
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219/404

ヴァルマイア



轟音。


崩れ落ちた石柱が床を叩き、大地が大きく震えた。


神殿全体が悲鳴を上げる。


壁は軋み、


天井はゆっくりと沈み始めていた。


それでも。


二人だけは止まらない。




虚無の使徒が踏み込む。


今までとは違う。


黒い霧が剣へ集まり、その刃は夜のような闇を纏っていた。


一閃。


空間そのものを裂くような斬撃がベスへ迫る。


ベスは真正面から迎え撃つ。


キィィィィィン!!


剣とフェンリルが同時に受け止める。


凄まじい衝撃。


床が耐え切れず、大きく陥没した。


二人の身体が同時に宙へ浮く。




落ちる。


いや。


落ちながら斬り合う。


剣が交わる。


フェンリルが押し返す。


黒い刃が唸る。


崩れゆく床を踏み台に、互いが何度も跳ぶ。


その激突だけで、


さらに大きな亀裂が神殿を駆け抜けた。




虚無の使徒が初めて攻め続ける。


止まらない。


一撃。


二撃。


三撃。


黒い剣が嵐のように降り注ぐ。


ベスは防ぐ。


受ける。


逸らす。


流す。


ガルドの木剣。


あの何百回もの衝突。


あの日々が、


今はすべて自分を支えていた。




黒い刃が頬を掠める。


肩を裂く。


腕へ浅い傷が増える。


白銀の装甲にも細かな傷が刻まれていく。


だが。


フェンリルは止まらない。


左腕は自然に動く。


考える前に。


身体が答えを出していた。




虚無の使徒が距離を取る。


黒い霧がさらに濃くなる。


神殿の空気まで黒く染まり始める。


床へ落ちた瓦礫が、その魔力だけで静かに砕けていく。


ベスは静かに呼吸を整えた。


荒い。


肺が焼ける。


腕は重い。


それでも。


瞳だけは揺るがない。




二人は同時に走った。


一直線。


逃げない。


避けない。


正面から激突する。


キィィィィィン!!


火花が爆発する。


衝撃だけで、


神殿を支える巨大な梁が大きく軋んだ。


天井から無数の石塊が降り注ぐ。


しかし。


二人はその雨の中を駆け抜ける。


瓦礫は剣圧に弾き飛ばされ、


近付くことすらできない。




その瞬間だった。


ベスは初めて気付く。


虚無の使徒は速い。


強い。


だが。


もう。


見失わない。


肩の入り方。


踏み込み。


重心。


そのすべてが、


自分には見えている。


ベスは静かに一歩踏み込む。


虚無の使徒も動く。


次の一撃。


その瞬間だけが、
























勝負を分けようとしていた。

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