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バル  作者: 隣の猫
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215/409

ディスノ



轟音が神殿を揺らした。


キィィィィィン――!!


剣と剣が激突した瞬間、床が大きく震える。


足元へ新たな亀裂が走り、石畳が音を立てて砕け散った。


飛び散る破片を踏み砕きながら、ベスはさらに踏み込む。


右手の剣が閃く。


同時に、肩まで白銀の装甲に覆われた左腕――フェンリルが黒い剣へ叩き付けられた。


轟ッ!!


衝撃だけで周囲の空気が弾け飛ぶ。


近くの石柱へ無数の亀裂が走り、天井から大きな石塊が崩れ落ちた。


だが。


二人は止まらない。


落下した石塊は、二人の剣圧へ触れた瞬間、粉々に砕け散った。




虚無の使徒が黒い霧へ溶ける。


姿が霞む。


次の瞬間には、ベスの左後方。


黒い刃が静かに迫る。


振り返らない。


フェンリルが動く。


巨大な狼の前脚が黒い刃を真正面から受け止めた。


ガギィィィン!!


耳を裂くような衝突音。


衝撃波が神殿を駆け抜け、壁面の装飾が一斉に砕け落ちる。


ベスはその衝撃を利用するように身体を捻った。


フェンリルが黒い剣を押し流す。


その流れへ、右手の剣が重なる。


鋭い斬撃。


虚無の使徒は半身だけで躱す。


剣先は黒い外套を浅く裂き、霧を散らした。




間髪入れず、虚無の使徒が踏み込む。


速い。


だが。


ベスはもう、その速さに驚かなかった。


剣が来る。


左腕が受ける。


身体が流れる。


右手が返す。


その一連の動きに、一切の迷いはない。


フェンリルは武器ではない。


もう。


左腕そのものだった。




二人は再び激突する。


剣。


左腕。


黒い霧。


銀色の魔力。


互いの一撃が交わるたび、神殿は悲鳴を上げる。


床が大きく震えた。


天井の亀裂はさらに広がり、巨大な梁が軋み始める。


しかし、その異変すら二人の視界には入っていなかった。


互いの世界には、目の前の敵しか存在しない。


人では届かない領域。




















そこに立つ二つの影だけが、静かに神殿を壊し続けていた。

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