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バル  作者: 隣の猫
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ミレシス



神殿はなお揺れ続けていた。


激突のたびに床は震え、壁へ走った亀裂はさらに広がっていく。


天井から降り注ぐ石片が乾いた音を立て、古き神殿は少しずつ限界へ近付いていた。


それでも。


誰一人として足を止めない。




黒い霧が揺らぐ。


虚無の使徒が姿を消した。


その瞬間だった。


レオンは迷わず踏み込む。


「はぁぁぁっ!」


大剣が大きく薙ぎ払われる。


狙いは敵ではない。


敵が進む先。


虚無の使徒は自然と身体を流した。


「そこ!」


アイラの矢が放たれる。


一直線ではない。


避ける先へ置かれた一矢。


虚無の使徒はさらに軌道を変える。


その先には。


ガルドがいた。


キィィィン!!


剣と剣が激しくぶつかる。


重い衝撃が神殿中へ響いた。




今までなら。


ここで終わっていた。


だが。


黒い刃がガルドの死角へ滑り込む。


「団長!」


リシアが駆ける。


細身の剣が黒い刃を弾いた。


火花が散る。


ガルドは半歩だけ下がり、体勢を立て直す。


「……助かった。」


「まだです!」


リシアはすぐに距離を取り、再び仲間たちへ視線を向ける。


もう敵だけを見てはいなかった。


仲間全員を見ていた。




虚無の使徒は再び霧となる。


今度はレオンの背後。


「後ろ!」


アイラの声。


レオンは振り向かない。


身体だけを沈める。


黒い刃が頭上を通り過ぎる。


その瞬間。


レオンは身体を回転させ、大剣を振り抜いた。


虚無の使徒は避ける。


だが。


避けた場所へ。


再びアイラの矢が飛ぶ。


「……!」


虚無の使徒は着地を変える。


そこへガルドが踏み込む。


キィィィン!!


三人の攻撃が、一つの流れになり始めていた。




レオンは息を整えながら笑う。


「なるほどな。」


「一人で当てる必要はねぇ。」


「仲間へ繋げればいい。」


アイラも静かに頷く。


「ようやく見えてきた。」


「人外の戦い方が。」


リシアは二人の少し後ろで小さく微笑む。


「皆さんが前だけ見られるように。」


「私が支えます。」


誰も否定しなかった。


それが今のリシアの役目だった。




虚無の使徒は四人を静かに見つめる。


仮面の奥から感情は伝わらない。


やがて小さく口を開いた。


「なお抗うか。」


「愚かな。」


その言葉にも、


四人の表情は変わらない。


恐れも。


迷いも。


もうなかった。




ガルドは静かに剣を構える。


その隣へ、


レオンが並ぶ。


さらに、


アイラ。


そしてリシア。


誰も合図はしない。


誰も指示を待たない。


それぞれが、


自分の役目を理解していた。


四人の呼吸が、


静かに一つになる。


ガルドは前だけを見据え、


低く言った。


「見せてみろ。」


「灰鷹の強さを。」


その一言を合図に、




























四人は同時に地を蹴った。

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