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バル  作者: 隣の猫
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オルフェアン



神殿はなお震え続けていた。


床へ刻まれた亀裂は少しずつ広がり、


砕けた石片が絶え間なく降り注ぐ。


人外同士の激突は、


古き神殿そのものを少しずつ蝕んでいた。




キィィィン!!


ガルドの剣と虚無の使徒の刃が激しくぶつかる。


重い。


受け止めるだけで腕が軋む。


そこへレオンが踏み込む。


進路を塞ぐ一撃。


虚無の使徒は自然と身体を流す。


その先へ。


アイラの矢が飛ぶ。


完全には捉えられない。


それでも。


虚無の使徒の動きは確実に制限され始めていた。




「……。」


その戦いを見つめながら、


リシアは静かに呼吸を整えていた。


自分はまだ届かない。


剣では敵わない。


それは分かっている。


だからこそ。


自分にしかできないことを探す。




虚無の使徒が黒い霧となって消える。


次の瞬間。


ガルドの背後へ現れた。


「団長!」


リシアは反射的に踏み込む。


細身の剣を差し込む。


キィン!!


黒い剣の軌道がわずかに逸れた。


ガルドは半歩だけ身体を引く。


その隙で体勢を立て直す。


「……助かった。」


短い一言。


リシアは小さく笑った。


「まだまだです。」


二人は再び前へ出る。




それからも同じだった。


レオンが押す。


アイラが導く。


ガルドが斬る。


その中で。


リシアだけは違う場所を見ていた。


敵ではない。


仲間だった。


誰の足が止まったか。


誰の呼吸が乱れたか。


誰が次に危ないか。


その全てを見続ける。




「右!」


リシアの声。


レオンは反射的に身体を捻る。


黒い刃が鼻先を掠めた。


「助かった!」


「前だけ見て!」


「任せろ!」


レオンは笑う。


そのまま再び踏み込んでいく。




今度はアイラだった。


虚無の使徒が一瞬で距離を詰める。


その前へ。


リシアが身体を滑り込ませる。


細身の剣が火花を散らす。


「アイラ!」


「ありがとう!」


アイラはすぐに後ろへ跳び、


次の矢を番えた。




何度も。


何度も。


リシアは仲間を守る。


攻撃ではない。


追撃でもない。


ただ。


仲間が本来の力を出せるよう、


一瞬だけ時間を作る。


その一瞬が、


少しずつリシア達の連携を変え始めていた。




ガルドは戦いながら、その姿を見ていた。


(そうか。)


(それがお前の剣か。)


誰かを倒すためではない。


誰かを生かすための剣。


それは治療師として歩んできたリシアだからこそ辿り着ける戦い方だった。



神殿が再び大きく震える。


柱へ新たな亀裂が走る。


石片が崩れ落ちる。


戦いはまだ終わらない。


それでも。


灰鷹は確実に変わり始めていた。






























四人はまだ勝てない。

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