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バル  作者: 隣の猫
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ラグネア



神殿はなお激しく揺れていた。


石柱へ刻まれた亀裂はさらに深くなり、


天井から降り注ぐ石片が戦場へ降り積もっていく。


その中で。


アイラは静かに弓を構えていた。


放っても避けられる。


それはもう嫌というほど思い知らされていた。




レオンが踏み込む。


「はぁぁぁっ!」


大剣が虚無の使徒を襲う。


だが。


今度は違った。


斬るためではない。


進む先を塞ぐ一太刀。


虚無の使徒は自然と右へ身体を流した。


その瞬間。


アイラは弦を離す。


ヒュンッ!!


一直線ではない。


わずかに右へ逸らした矢。


しかし。


虚無の使徒はその矢も紙一重で避ける。


「……。」


アイラは驚かなかった。


避けることまで読んでいたからだ。




「なるほど。」


小さく呟く。


今までの自分は。


当てようとしていた。


だから読まれる。


風を読むように。


相手もまた矢を読んでいる。


ならば。


読む相手を読めばいい。




もう一本。


静かに番える。


レオンが再び前へ出る。


ガルドも剣を重ねる。


虚無の使徒は今度は左へ流れる。


その瞬間。


アイラの矢が飛ぶ。


ヒュッ!!


虚無の使徒は避ける。


だが。


避けた先にはガルドがいた。


キィィン!!


剣が激しくぶつかる。


初めてだった。


アイラの矢が、


攻撃ではなく仲間の剣を生かした。




「いい。」


ガルドが短く言う。


それだけだった。


だが。


アイラの表情が少しだけ変わる。


「そういうこと。」


「当てなくてもいい。」


「仲間へ繋げればいい。」


弓を握る手へ力が宿る。




その後も矢は放たれる。


一本。


また一本。


虚無の使徒は避け続ける。


しかし。


そのたびに動く先は、


少しずつアイラの望む場所へ誘導されていった。


まだ届かない。


まだ倒せない。


それでも。


人外の動きは、
























少しずつアイラの手の中へ収まり始めていた。

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