カルネス
「団長!」
レオンたちはついにガルドのもとへ辿り着いた。
四人は自然と散開する。
正面にはレオン。
左にはガルド。
後方にはアイラ。
そしてガルドのすぐ後ろに、リシア。
何度も死線を潜り抜ける中で生まれた灰鷹の陣形だった。
「行くぞ。」
ガルドが静かに剣を構える。
四人は同時に地を蹴った。
レオンが正面から大剣を振り下ろす。
重い一撃。
虚無の使徒は受け止める。
その巨大な剣が生み出した一瞬の影。
そこへ。
アイラの矢が一直線に走る。
虚無の使徒は剣を返し、矢を弾いた。
その瞬間を狙って、
ガルドが踏み込む。
鋭い斬撃。
虚無の使徒も迎え撃つ。
キィィン!!
剣と剣が激しくぶつかった。
その衝撃で、
ほんの一瞬だけガルドの身体が開く。
「団長!」
リシアは反射的に飛び出した。
狙ったのは虚無の使徒ではない。
ガルドへ振り下ろされようとしていた黒い剣。
細身の剣を滑り込ませる。
キィン!
甲高い音が響く。
黒い剣の軌道がわずかに逸れた。
ガルドはその隙に身体を引く。
「助かる。」
短い一言。
リシアは小さく頷いた。
まだ倒す力はない。
それでも。
仲間を守ることならできる。
「続けるぞ!」
レオンが再び踏み込む。
今度は横薙ぎ。
その軌道へ合わせるように、
アイラの矢が飛ぶ。
完璧な連携だった。
だが。
虚無の使徒は黒い霧となって二人の間をすり抜ける。
「なっ!」
レオンの剣も。
アイラの矢も。
何一つ届かない。
次の瞬間には、
虚無の使徒はリシアの目前にいた。
「!」
黒い剣が閃く。
リシアは咄嗟に受ける。
細身の剣が大きく震え、
身体ごと弾き飛ばされた。
「リシア!」
ガルドが飛び込む。
虚無の使徒の追撃を受け止める。
重い。
受け止めた腕が軋む。
「くっ……!」
「団長!」
レオンも駆け寄る。
大剣が唸る。
しかし、
その刃は虚無の使徒へ届く直前で空を切った。
「速ぇ……。」
レオンは歯を食いしばる。
今まで戦ってきたどんな敵とも違う。
速さだけではない。
動きそのものが読めなかった。
アイラは矢を番えたまま動かない。
放てば避けられる。
それが分かってしまった。
「見えない……。」
思わず呟く。
どこを狙えばいいのか。
その答えがまだ見つからない。
虚無の使徒は静かに四人を見渡した。
「見事な連携です。」
「積み重ねてきたのでしょう。」
穏やかな声だった。
「ですが。」
「我らには届きません。」
黒い霧が揺らぐ。
その姿が再び掻き消えた。
四人は同時に構える。
それでも。
誰一人として、
次に現れる場所を読むことはできなかった。
神殿が大きく震える。
柱へ新たな亀裂が走る。
天井から石片が降り注ぐ。
長い年月を耐えてきた神殿は、
人外同士の戦いによって少しずつ悲鳴を上げ始めていた。
そして灰鷹もまた、
初めて”人外”という壁の高さを痛感していた。




