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バル  作者: 隣の猫
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リウム



銀色の魔力が神殿を照らす。


フェンリルを顕現させたベスは、一歩踏み込んだ。


「はぁっ!」


剣が閃く。


同時に巨大な狼の前脚が虚無の使徒へ襲い掛かる。


虚無の使徒は黒い霧をまといながら受け流そうとする。


だが。


「っ……!」


初めて表情が揺れた。


フェンリルの一撃は、その身体を大きく吹き飛ばした。


柱へ激突した衝撃で、神殿全体が震える。


天井から石片が落ち始めた。




「やはり……。」


虚無の使徒は静かに立ち上がる。


「神より古き力。」


「恐るべきものです。」


ベスは答えない。


再び間合いを詰める。


今度は虚無の使徒も正面から迎え撃った。


黒と銀。


二つの力が激しくぶつかり合う。




その頃。


ガルドも虚無の使徒と剣を交えていた。


キィィン!!


重い一撃。


続く二撃。


三撃。


どれも致命傷だけを狙ってくる。


「……!」


ガルドは受け流し続ける。


だが。


一歩。


また一歩。


少しずつ押し込まれていた。




「団長!」


レオンが叫ぶ。


しかし魔物が行く手を塞ぐ。


「邪魔だ!」


大剣が唸る。


アイラの矢が援護する。


リシアも魔物を斬り伏せる。


それでもガルドのもとまでは届かない。




虚無の使徒の黒い霧が、ガルドの腕へ絡み付く。


冷たい感覚。


胸の奥で、眠る力が静かに疼いた。


――解放しろ。


――すべてを斬れ。


ガルドの瞳がわずかに灰色へ染まり始める。


その瞬間だった。


頭の上から鋭い声が響く。


「ならん!!」


灰猫だった。


「呑まれるぞ!!」


「忘れたか!」


その一喝で、ガルドは我に返る。


「……っ。」


深く息を吐く。


握り締めた剣へ力を込め直した。




虚無の使徒は静かに笑う。


「使えないのですか。」


「あの力を。」


その言葉と同時に黒い刃が閃く。


ガルドは辛うじて受け止める。


しかし衝撃で床が砕け、身体が大きく後退した。


背中が柱へぶつかる。


柱には新たな亀裂が刻まれた。


神殿は再び大きく揺れる。




一方。


ベスは虚無の使徒を徐々に押し始めていた。


砂漠最後の夜。


ガルドとの模擬戦。


その経験は確実にベスを変えていた。


人外の動き。


人外の間合い。


そのすべてが身体へ染み付いている。


「そこだ!」


銀色の前脚が黒い剣を弾く。


虚無の使徒が初めて大きく体勢を崩した。


神殿へ再び衝撃が響く。


床が震え、


天井からはさらに多くの石片が降り注いだ。


長い年月を耐え続けた神殿は、





















激しさを増す戦いによって、確実に限界へ近付き始めていた。

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