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バル  作者: 隣の猫
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フェリウ



神殿へ響く咆哮が、少しずつ減っていく。


床には無数の魔物が倒れ、


なおも押し寄せる群れも、その勢いを失い始めていた。


レオンは肩で息をしながら笑う。


「ようやく終わりか!」


大剣を振り抜く。


最後の一体が吹き飛び、黒い身体が床へ崩れ落ちた。


神殿は再び大きく震える。


柱の亀裂はさらに広がり、


天井からは細かな石片が落ち始めていた。




静寂。


それはほんの数秒だけだった。


「お見事。」


虚無の使徒が初めて歩き出す。


ゆっくりと。


まるで散歩でもするような足取りだった。


「ですが。」


「ここからです。」


二人は同時に剣を抜く。


黒い刀身。


そこから溢れ出す黒い霧が、神殿の床を静かに覆っていく。


空気が変わる。


ベスは自然と剣を握り直した。


「来る。」




次の瞬間。


虚無の使徒が消えた。


「速い!」


ガルドが叫ぶ。


キィン!!


黒い剣とガルドの剣が激しくぶつかる。


衝撃で床が震えた。


もう一人は一直線にベスへ迫る。


「フェンリルの継承者。」


「その力、お借りします。」


「断る!」


ベスが剣を振るう。


金属音が神殿へ響く。


互いの剣が何度もぶつかり合う。


その速さに、周囲は割って入ることができない。




レオンが踏み込もうとした瞬間。


無数の黒い魔物が再び現れた。


「まだいやがるのか!」


レオンは舌打ちし、大剣を構える。


アイラも矢を放つ。


「ベス!」


「こっちは任せて!」


「はい!」


ベスは短く返事をする。


目の前の敵だけを見る。




虚無の使徒は笑った。


「素晴らしい。」


「神より古き力。」


「やはり、本物ですね。」


その言葉と同時に、


黒い霧が一気に膨れ上がる。


ベスは後ろへ跳ぶ。


「団長!」


ガルドも距離を取る。


二人は互いに視線を交わした。


「行けるか。」


「もちろん。」


ベスは静かに左腕へ意識を向ける。


昨夜は限界だった。


だが今は違う。


「フェンリル。」


銀色の魔力が左腕から溢れ始める。


肩まで白銀の装甲が広がる。


蒼白い紋様が静かに輝いた。


巨大な狼の前脚が、ゆっくりと姿を現す。


神殿の空気が震えた。


二人の虚無の使徒は初めて表情を変える。


「……。」


「ようやく。」


「その姿を見せましたか。」


ベスは静かに剣を構える。


「ここからだ。」


神殿の奥へ響く銀色の魔力。


















その圧力だけで、周囲の黒い霧がゆっくりと押し返されていった。

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