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バル  作者: 隣の猫
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201/406

エルミア



重く閉ざされていた石門へ、ベスは静かに手を触れた。


ゴゴゴゴ……


低い地鳴りが響く。


長い年月、誰も開くことのなかった巨大な石門が、ゆっくりと左右へ開いていく。


その奥から流れ出てきた空気は冷たく、どこか淀んでいた。


「……行くぞ。」


ガルドが一歩踏み出す。


灰鷹は神殿へ足を踏み入れた。




神殿の中は静まり返っていた。


黒い石で築かれた広大な回廊。


高い天井。


幾本もの巨大な柱。


足音だけが反響し、静寂をより際立たせていた。


ベスは辺りを見回す。


「誰も……いない。」


その瞬間だった。


ゴォォォ……


神殿全体が低く震える。


柱の陰。


天井。


床の割れ目。


至る所から無数の魔物が姿を現した。


「来るぞ!」


レオンが大剣を抜き放つ。


アイラは素早く矢を番え、


リシアも細身の剣を抜く。


しかし。


魔物たちは左右へ割れるように退いた。


その奥から、


二つの黒い影がゆっくりと姿を現す。


黒い外套。


黒い仮面。


虚無の使徒だった。


二人は静かに灰鷹を見つめる。


「……ようこそ。」


静かな声が神殿へ響く。


「本来の世界、楽しんで頂けた事と思います。」


「世界が、神が隠した真実の世界。」


「奥で我らの盟主がお待ちです。」


二人はゆっくりとベスへ視線を向けた。


「フェンリルの継承者どの。」


「どうぞ、ご案内します。」


その言葉に、ベスは眉をひそめる。


「案内だと……。」


ガルドは剣を構え、一歩前へ出た。


「信用するな。」


「分かっています。」




次の瞬間。


二人の虚無の使徒は左右へ静かに下がった。


その視線はベスだけを追っている。


だが――


「殺せ。」


その一言と同時に、


ギャアアアアア!!


無数の魔物が一斉に灰鷹へ襲い掛かった。


ベスではない。


狙われたのは、その仲間たちだった。


「ちっ!」


レオンが真っ先に飛び出す。


「道を開けろぉ!!」


豪快な一撃で魔物を吹き飛ばす。


アイラの矢が次々と闇を裂き、


リシアは仲間の死角へ入り込む魔物を素早く斬り伏せる。


ベスも剣を振るい、


左腕の獣爪で魔物を弾き飛ばした。


「全員!」


ガルドが叫ぶ。


「ここを突破するぞ!」


「はい!」


灰鷹は互いに背中を預け合いながら前へ進む。


神殿最奥を目指して。























誰一人欠けることなく。

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