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バル  作者: 隣の猫
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カルディオ



「迎え撃て!」


ガルドの号令が響く。


次の瞬間、黒い霧をまとった魔物たちが一斉にオアシスへ雪崩れ込んだ。


砂煙が舞い上がる。


咆哮が辺りを震わせる。


静かな楽園は、一瞬で戦場へ姿を変えた。




先頭へ飛び出したのはレオンだった。


「どけぇぇぇ!!」


大剣が豪快に振り抜かれる。


魔物を二体まとめて吹き飛ばし、そのまま前へ踏み込む。


「まだまだ来い!」


次々と迫る魔物を力任せに薙ぎ払っていく。




反対側ではアイラが木の上へ飛び乗っていた。


「右から三体!」


放たれた矢が風を裂く。


一矢。


二矢。


三矢。


狙い違わず魔物の急所を射抜く。


「ベス!」


「左!」


その声より早く、ベスは踏み込んでいた。


獣のように低く身を沈める。


一歩。


二歩。


剣閃が走る。


一体。


また一体。


魔物が砂へ崩れ落ちる。


フェンリルは顕現しない。


昨夜の模擬戦で消耗した身体では、解放状態を維持できない。


今は剣だけで戦う。




ガルドもまた、無駄のない剣筋で魔物を斬り伏せていく。


一太刀ごとに魔物が倒れ、


灰鷹の前線は崩れない。


しかし魔物の数は多い。


次から次へと押し寄せてくる。




「ぐっ……!」


レオンの腕へ魔物の爪が掠めた。


血が滲む。


すぐにリシアが駆け寄る。


「じっとしてください!」


治癒魔法の光が傷を包む。


その隣へノアも慌ててしゃがみ込んだ。


「猫さん!」


「こんな感じだったよね?」


灰猫はちらりとノアを見る。


「にゃ。」


面倒そうな一声。


ノアは両手を重ね、小さく息を吸った。


「えっと……。」


「こう!」


淡い光が手のひらから溢れる。


リシアほど強い光ではない。


それでも傷口から流れていた血が、少しずつ止まり始めた。


リシアは一瞬だけ目を丸くし、優しく微笑む。


「……上手。」


ノアは照れくさそうに笑った。


「えへへ。」


レオンも豪快に笑う。


「将来が楽しみだな!」


ノアは少しだけ胸を張る。




その頃。


ガルドは一度も虚無の使徒から目を離していなかった。


魔物は襲ってくる。


だが五人の虚無の使徒は、一歩も動かない。


ただ静かに戦場を見つめている。


まるで、この戦いそのものには興味がないかのように。


「団長。」


ベスが小さく呼ぶ。


ガルドは視線を逸らさないまま答えた。


「あいつらはまだ動かない。」


「だが油断するな。」


「本命は、あいつらだ。」


ベスは小さく頷き、再び魔物の群れへ飛び込んだ。




戦いは続く。


魔物が倒れるたびに木々は折れ、


地面は抉れ、


湖畔は少しずつ傷付いていく。


それでも灰鷹は退かなかった。


仲間を守るため。


このオアシスを守るため。


剣を振るい続ける。


その様子を、




























五人の虚無の使徒は静かに見つめ続けていた。

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