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バル  作者: 隣の猫
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ネオラ



翌朝。


乾いた砂漠へ、穏やかな朝日が差し込んでいた。


オアシスの水面は静かに揺れ、鳥たちが木々の間を飛び交う。


昨夜の模擬戦が嘘のような、平和な朝だった。


「団長!」


「ベス!」


その静けさを破ったのはリシアだった。


腕を組み、二人を睨みつけている。




「夜通し模擬戦なんて何を考えていたんですか!」


「今日は出発する日なんですよ!」


「怪我でもしていたらどうするつもりだったんですか!」


ベスは正座したまま深く頭を下げる。


「……すみません。」


隣ではガルドも静かに頭を下げた。


「悪かった。」


その頭の上には灰猫。


当然のように丸く座り、


「にゃ。」


と短く鳴く。


その姿を見たノアが小さく笑った。


「猫さんまで怒られてる……。」


リシアは思わず吹き出す。


「猫ちゃんは悪くありません。」


灰猫は何事もなかったように欠伸を一つすると、そのまま目を閉じた。




説教が終わると、張り詰めていた空気も少し和らいだ。


レオンが笑う。


「団長が正座してる姿なんて初めて見たぜ。」


アイラも肩をすくめた。


「貴重なものを見ましたね。」


ガルドは咳払いを一つ。


「……忘れろ。」


その一言に、一同から笑いが漏れる。


ベスも自然と口元を緩めていた。




朝食を終え、一行は旅支度を始める。


水筒へ最後の水を汲み、


荷物を背負い直す。


オアシスで過ごした短い時間も、これで終わりだった。


ベスは湖を静かに見つめる。


旅の途中で得たもの。


フェンリルとの新たな力。


ガルドから教わった戦い方。


そのすべてを胸へ刻み込む。


「行こう。」


その一言に仲間たちも頷いた。




リシアが最後に周囲を見回す。


「忘れ物はありませんね?」


全員が頷く。


その時だった。


灰猫の耳がぴくりと動いた。


「……にゃ。」


いつもより低い声。


ガルドの表情が変わる。


その視線が、ゆっくりと砂漠の彼方へ向く。


ベスも異変を感じ取り、剣の柄へ静かに手を添えた。


風が止む。


鳥の鳴き声も消えた。


静まり返ったオアシスに、不気味な沈黙だけが広がっていく。


ガルドが小さく呟く。


「……来たか。」




















その一言だけが、静かな朝へ重く響いた。

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