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バル  作者: 隣の猫
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ラクシース



朝日が静かにオアシスを照らしていた。


昨夜の焚き火には、まだ小さな火が残っている。


湖面を渡る風は涼しく、砂漠とは思えないほど穏やかな朝だった。


「……朝か。」


最初に目を覚ましたベスは、大きく息を吸い込む。


水の匂い。


草木の匂い。


乾いた砂漠を歩き続けてきた身体には、それだけで心が安らいだ。


「よく眠れたな。」


独り言を漏らしながら立ち上がる。


周囲では仲間たちも少しずつ目を覚まし始めていた。




「ふぁぁぁ……。」


レオンは大きくあくびをすると、そのまま湖へ向かって歩いていく。


「久しぶりに身体が軽い。」


「今日は調子がいいぞ。」


「昨日は寝るだけで潰れたものね。」


アイラが苦笑する。


「それだけ疲れてたってことよ。」


レオンは湖の水で顔を洗う。


「冷てぇ!」


「目ぇ覚めた!」


その大きな声に、リシアも思わず笑みを浮かべた。




「おはようございます。」


リシアは朝食の準備を始める。


干し肉を切り分け、硬いパンを温める。


ノアも隣で小さなお皿を並べていた。


「私も手伝う!」


「ありがとう。」


「じゃあ、お皿お願い。」


「うん!」


オアシスには穏やかな時間が流れていた。




その様子を見ながら、灰猫はベスの肩へ飛び乗る。


「若いの。」


「朝の空気というのは良いものじゃ。」


「旅ばかりしておると忘れがちになるがの。」


ベスは小さく笑う。


「珍しく機嫌がいいな。」


「ふぉっふぉっ。」


「年寄りにも気分の良い日はある。」


「今日は休め。」


「休める時に休むのも旅人の務めじゃ。」


「そうだな。」


ベスは素直に頷いた。




朝食を終えたあと。


ノアは灰猫を抱き上げ、湖の周りを散歩していた。


「猫さん。」


「お魚いるよ。」


灰猫も湖を覗き込む。


「ほう。」


「なかなか大きいのがおる。」


「釣ったらレオンが喜びそうじゃな。」


「本当?」


「うむ。」


ノアは嬉しそうに笑った。


その時だった。


灰猫の耳がぴくりと動く。


何かを感じ取ったように、ゆっくり空を見上げる。


「……。」


その表情が変わる。


「猫さん?」


ノアが不思議そうに顔を覗き込む。


灰猫は何かを言おうと口を開いた。


しかし。


「…………。」


言葉が出ない。


何度か口を動かす。


そして、ようやく漏れたのは。


「……にゃ。」


「え?」


ノアは首を傾げた。


「猫さん?」


灰猫はもう一度口を開く。


「……にゃ。」


それだけだった。


いつもの老人のような口調は消え、猫らしい鳴き声だけが静かなオアシスへ響いた。


ノアは少しだけ心配そうに灰猫を抱きしめる。


「どうしたの……?」


















灰猫自身も戸惑ったように、小さく目を瞬かせていた。

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