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バル  作者: 隣の猫
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オルディス



荒野が揺れる。


ズシン……


ズシン……


ズシン……


無数の魔物が砂煙を巻き上げながら迫ってくる。


サンドウルフ。


岩蜥蜴。


毒尾蠍。


荒鷲。


壊人。


どこを見ても魔物だった。


「囲まれた!」


レオンが大剣を構える。


「数が多すぎる!」


アイラは矢を放ち続ける。


一本。


二本。


三本。


正確に魔物を射抜く。


しかし倒しても倒しても、新たな魔物が現れる。


「きりがありません!」




ベスはようやく我に返っていた。


目の前には母を殺した巨獣。


その向こうでは、仲間たちが必死に戦っている。


「……俺。」


復讐しか見えていなかった。


仲間が見えていなかった。


その事実が胸を締めつける。


「ベス!」


ノアの悲鳴が響く。


振り返る。


毒尾蠍がノアへ飛びかかっていた。


「ノア!」


ベスは迷わず駆け出す。


今度は巨獣ではない。


仲間のもとへ。


剣を振るい、毒尾蠍を斬り伏せる。


「大丈夫か!」


「う、うん!」


ノアは震えながらも頷いた。


ベスは小さく息を吐く。


今、自分が守るべきものは何なのか。


その答えは、もう目の前にあった。




それでも戦況は悪化する一方だった。


レオンは傷だらけになりながら大剣を振るう。


アイラの矢筒は空になりかけていた。


リシアは癒やし続けているが、魔力は限界へ近づいている。


ガルドでさえ、一振りごとに息が荒くなっていた。


魔物は減らない。


むしろ増えている。


巨獣は遠くから静かに戦いを眺めていた。


まるで獲物が弱る時を待っているかのように。




ガルドは静かに目を閉じた。


脳裏によみがえる。


黒い霧。


身体を支配していく冷たい感覚。


敵も味方も分からなくなり、ただ剣を振るい続けた、あの日。


自分の剣先が仲間へ向いた瞬間。


そして――


自分を止めた、小さな影。


「……。」


ガルドは静かに拳を握る。


もう二度と。


あの感覚だけは味わいたくなかった。


もう二度と。


仲間へ剣を向けたくはなかった。




「……悪いな。」


その言葉に、一匹の灰猫が静かに顔を上げる。


ガルドは猫を見つめ、小さく笑った。


「また、お前に世話になる。」


少しだけ間を置く。


「あの時は助けられた。」


「ありがとう。」


灰猫は何も鳴かない。


ただ静かにガルドを見つめ返す。


ガルドはゆっくりと剣へ手を掛けた。


「……だが。」


「今回は、止めるな。」


灰猫はゆっくりと目を閉じる。


それはまるで、覚悟を受け入れたようにも見えた。


ガルドは静かに剣を抜く。


「全員。」


低く、それでいて揺るがない声が響く。


「俺の後ろへ下がれ。」


仲間たちが息を呑む。




















ガルドの周囲の空気が、ゆっくりと変わり始めていた。

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