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バル  作者: 隣の猫
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ルナフェス



「あああああぁぁぁっ!!」


咆哮とともに、ベスは巨獣へ飛び込む。


その行く手を遮る魔物たち。


サンドウルフ。


岩蜥蜴。


毒尾蠍。


壊人。


すべてが一斉に襲いかかる。


「邪魔だぁっ!」


剣が閃く。


一閃。


二閃。


三閃。


魔物たちは次々と地へ伏していく。


まるで誰もベスを止められない。


その姿は、人ではない。


獲物へ一直線に駆ける獣だった。




「速い……。」


アイラが思わず息を呑む。


「今のベスさん……。」


リシアも言葉を失う。


レオンは大剣を構えたまま苦い顔をした。


「強ぇ。」


「……けど違う。」


ガルドは静かに頷く。


「あれは戦士じゃない。」


「復讐に飲まれた獣だ。」




ベスはついに巨獣の目前へ辿り着く。


「終わりだぁぁっ!!」


渾身の一撃。


ガギィィィン!!


巨獣の爪と剣が激突する。


衝撃で地面が割れる。


巨獣が初めて後ろへ下がった。


ベスは追う。


斬る。


蹴る。


獣爪を叩き込む。


これまで積み重ねてきた技術。


旅で得た経験。


ガルドから学んだ剣。


すべてをぶつける。


巨獣の肩へ傷が走る。


黒い血が地面へ滴った。


「やった!」


ノアが思わず叫ぶ。


レオンも拳を握る。


「押してる!」


初めてだった。


母を殺した魔物が、押されている。


ベスの瞳には確かな希望が宿る。


「母さん……!」


「仇は……俺が!」


その瞬間だった。






























巨獣が笑った。


低く。


不気味に。


そして――


「グォォォォォォッ!!」


天を震わせる咆哮が荒野へ響き渡る。


その声は、どこまでも遠くへ広がっていく。


ガルドの表情が変わる。


「……まずい。」


次の瞬間。


遠くの地平線が揺れ始めた。


砂煙が立ち上る。


一つではない。


二つでもない。


無数。


地面が震える。


ズシン……


ズシン……


ズシン……


レオンが目を見開く。


「嘘だろ……。」


サンドウルフの群れ。


岩蜥蜴の群れ。


毒尾蠍。


壊人。


荒鷲。


荒野中の魔物たちが、一斉にこちらへ向かっていた。


巨獣は最初から戦っていたのではない。


時間を稼いでいたのだ。


ベスはようやく周囲を見る。


そこには、仲間の姿よりも先に――


四方八方を埋め尽くす魔物の群れがあった。



















逃げ場は、もうどこにもなかった。

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