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バル  作者: 隣の猫
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ヴェルガ



ゴゴゴゴ……


開いた石扉の奥から、柔らかな光が差し込む。


警戒しながら、灰鷹はゆっくりと足を踏み入れた。


そこは神殿の最奥。


今までの石造りの通路とはまるで違う空間だった。




天井はなかった。


いや、正確には――


世界樹の内部だった。


巨大な幹が空洞となり、その中心に円形の祭壇が築かれている。


遥か上から木漏れ日が差し込み、無数の光の筋が静かに舞っていた。


「……きれい。」


ノアが思わず呟く。


誰も否定しなかった。


そこには戦いの気配も、壊人の気配もない。


静寂と神聖な空気だけが満ちていた。




祭壇の中央には、一つの石の台座。


その上には何も置かれていない。


ただ、複雑な紋様だけが刻まれている。


アイラが慎重に近付く。


「この紋様……。」


「星降る祭壇のものと似ています。」


ベスも台座を見つめる。


確かに似ている。


しかし、さらに古い。


まるで、星降る祭壇の原型のようだった。




その時。


ノアが小さく胸へ手を当てた。


「また聞こえる。」


ベスが隣へ立つ。


「何て言ってる?」


ノアは目を閉じ、小さく耳を澄ませる。


「……ありがとう。」


「来てくれて、ありがとうって。」


リシアは驚いたように祭壇を見つめた。


「感謝……?」


誰にも理由は分からなかった。




ノアはゆっくりと祭壇へ歩いていく。


自然な足取りだった。


導かれるように。


小さな手が台座へ触れた、その瞬間――


ブワァァァッ!!


祭壇全体が黄金色の光に包まれる。


世界樹が静かに輝き始めた。


葉が揺れる。


枝がざわめく。


風は吹いていない。


それでも、大樹は生きているかのように優しく音を奏でていた。




やがて祭壇の周囲へ、古代文字が次々と浮かび上がる。


アイラは夢中で文字を追う。


「記録です……!」


「これは世界樹を守ってきた人たちの記録……!」


しかし、あまりにも膨大だった。


読み切れない。


その時。


一文だけが強く輝く。


まるで、それだけは伝えたいと言わんばかりに。


アイラは静かに読み上げた。


『世界樹は命を繋ぐ。』


『巫女はその声を聞き、継承者はその力を守る。』


神殿は再び静寂へ包まれた。




ノアは首を傾げる。


「どういうこと?」


ベスは答えられなかった。


リシアも。


アイラも。


誰一人、その意味を知らない。


ただ一人。


ガルドだけが静かにノアを見つめていた。


その隣で灰猫も何も言わない。


静かに目を閉じているだけだった。


二人は語らない。


いや――


今はまだ、語る時ではないと知っていた。


世界樹は静かに葉を揺らし続ける。
























まるで、遠い昔から待ち続けていた者たちを迎えるように。

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