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バル  作者: 隣の猫
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エルナディア



白骨の花畑をあとにした灰鷹は、さらに森の奥へ進んでいた。


歩くたびに空気が重くなる。


湿度は増し、息を吸うだけで肺が熱を帯びる。


「この森……。」


レオンが肩で息をする。


「歩いてるだけで疲れるぞ。」


リシアも額の汗を拭った。


「魔力が濃すぎるのかもしれません。」


アイラは静かに周囲を警戒する。


「さっきから同じ景色が続いています。」


「まるで森が終わりません。」




ガルドは立ち止まり、地面へ手を触れた。


土は柔らかい。


しかし妙だった。


「……揺れている。」


ベスも膝をつく。


確かに。


僅かではあるが、大地が規則正しく震えている。


ドクン。


ドクン。


まるで鼓動だった。


灰猫が耳を伏せる。


「森が息をしておる。」


誰も冗談とは思わなかった。




歩き始めてしばらく。


ノアが足を止めた。


「どうした?」


ベスが振り返る。


ノアは森の奥を見つめている。


「……誰か。」


「呼んでる。」


その言葉に全員が息を呑んだ。


「誰が?」


リシアが優しく尋ねる。


ノアは困ったように首を傾げる。


「分かんない。」


「でも……。」


「こっちだよって。」


小さな指が森の奥を指した。


そこには何もない。


ただ深い緑が続くだけだった。


ガルドはしばらく考え、静かに口を開く。


「進む。」


「だが警戒は解くな。」




ノアはベスの手をぎゅっと握る。


「……怖い。」


ベスは優しく握り返した。


「大丈夫。」


「俺たちがいる。」


ノアは小さく頷いた。


その時だった。


ザァァァ……


風もないのに、森中の木々が一斉に揺れる。


葉が擦れ合い、不気味な音を奏でる。


まるで何者かが笑っているようだった。


団員たちは反射的に武器を構える。


しかし敵は現れない。


静寂だけが戻る。


灰猫は低く呟いた。


「歓迎されておるぞ。」


「……この森の主にな。」


ベスは森の奥を真っ直ぐ見つめた。


この森には、まだ誰も知らない秘密が眠っている。





















そしてその秘密は、静かに灰鷹を待ち受けていた。

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