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バル  作者: 隣の猫
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166/429

アルヴェス



ズズズ……


地面を割りながら巨大な植物が姿を現す。


幹には無数の口。


蛇のように蠢く蔦。


花弁は獣の牙のように開き、不気味な唸り声を響かせていた。


「下がれ!」


ガルドの声で灰鷹が散開する。


次の瞬間。


ビュンッ!


数本の蔦が槍のような速さで襲い掛かった。


「速い!」


ベスは剣で一本を弾く。


レオンは大剣で二本まとめて叩き落とした。


だが切ったはずの蔦は地面へ落ちた瞬間、新しい芽を伸ばし始める。


「再生してる!」


アイラが驚きの声を上げた。




リシアはノアを後ろへ下がらせる。


「私のそばにいて。」


「うん!」


ノアは必死に頷く。


だが、その視線は巨大な植物から離れない。


「怖い……。」


小さく震える声だった。


リシアは優しく肩へ手を置く。


「大丈夫。」


「みんながいるから。」




「普通に斬っても意味がない!」


レオンが叫ぶ。


切っても。


叩いても。


蔦は次々と生え変わる。


ガルドは植物全体を観察する。


「……待て。」


「蔦じゃない。」


「本体を探せ。」


ベスも視線を巡らせる。


巨大な幹。


絡み合う根。


その奥。


赤い花弁の中心だけが、規則正しく脈打っていた。


ドクン。


ドクン。


まるで心臓だった。


「団長!」


「あそこだ!」


ガルドは迷わず頷く。


「ベス!」


「道は作る!」




「任せろ!」


レオンが大剣を振り上げる。


「うおおおおっ!」


巨大な一撃で迫る蔦を吹き飛ばす。


アイラの矢が左右から伸びる蔦を射抜く。


灰鷹の団員たちも次々と蔦を引きつけ、道を切り開いていく。


「今!」


ガルドが叫ぶ。


ベスは一直線に駆け出した。




赤い花が大きく開く。


その中心から黒い胞子が噴き出した。


「ベス!」


リシアの声。


ベスは咄嗟に息を止める。


胞子の中を駆け抜ける。


あと一歩。


あと少し。


赤い核が目の前まで迫る。


「終わりだ!」


渾身の一撃。


銀色の刃が赤い核を貫いた。


パキン……


静かな音だった。


次の瞬間。


巨大な植物全体へ無数の亀裂が走る。


ズズズズ……


蔦が力なく地面へ落ちる。


幹はゆっくりと崩れ始めた。


森は再び静寂を取り戻す。




「終わった……。」


レオンがその場へ座り込む。


アイラも大きく息を吐いた。


「植物まで魔物になるなんて……。」


ガルドは崩れた幹を見つめる。


「いや。」


「元から魔物だったのか。」


「真実の影響で、ここまで異形になったのかもしれん。」


誰にも答えは分からない。




その時だった。


ノアが崩れた植物の根元を指差す。


「ベス。」


「見て。」


全員が近付く。


そこには、小さな石碑が半分埋もれていた。


長い年月を感じさせる古い石。


表面には、人の手で刻まれた文字が残っている。


しかし、その半分は植物の根に侵食され、読めなくなっていた。


アイラは土を払い、文字を目で追う。


「これは……。」


「誰かが、この森へ何かを残そうとした跡です。」


ガルドは静かに石碑を見つめる。


「先へ進めば、何か分かるかもしれん。」


赤き森は、ただ危険なだけの場所ではなかった。





















この森にはまだ、世界の真実へ繋がる何かが眠っているようだった。

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