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バル  作者: 隣の猫
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ネイファール



ギィィン!!


ベスと群れの長、その剣が激しくぶつかる。


衝撃で大地が砕け、砂煙が舞い上がる。


長は折れた剣を巧みに操り、獣とは思えない剣筋で攻め立てる。


「くっ……!」


ベスは一歩、また一歩と押し込まれていく。


力だけではない。


間合いも。


駆け引きも。


この魔物は、人との戦いを経験していた。




その頃。


群れの長がベスを引きつけている隙を狙い、別の猿たちが動き始める。


「しまった!」


アイラが矢を放つ。


一本は命中する。


だが、残る一体が木を蹴り、高く跳び上がった。


狙いは戦っている者ではない。


後方にいるノアだった。


「ノア!」


リシアが駆け出す。


しかし間に合わない。


猿の巨大な腕が振り下ろされる。




「やめろォォォッ!!」


ベスの叫びが荒野へ響く。


群れの長との戦いを捨てる。


考えるより先に身体が動いていた。


ノアの前へ飛び込む。


その瞬間だった。























ゴォォォォ……

















左腕のフェンリルが眩い銀色の光を放つ。












腕を覆う紋様が脈打つように輝き、肩口近くまで一気に広がっていく。


左腕から溢れた銀色の魔力が空中で形を成していく。


巨大な狼の前脚。


実体ではない。


だが確かな質量を持つ銀色の腕が、ノアを包み込むように現れた。


ドォォン!!


猿の渾身の一撃が叩き込まれる。


しかし――


銀狼の腕は微動だにしない。


次の瞬間。


猿は弾き飛ばされ、地面を何度も転がった。


「なっ……。」


レオンが目を見開く。


アイラも息を呑む。


リシアはノアを抱き寄せたまま、その光景を見つめていた。




銀狼の腕は数秒だけ姿を保つ。


やがて光の粒となり、静かに左腕へ吸い込まれていった。


ベスは左腕を見つめる。


「今のは……。」


灰猫が小さく鼻を鳴らす。


「まだ腕だけじゃ。」


「完全ではない。」


ガルドは静かにベスを見る。


「無理はするな。」


ベスは小さく頷いた。


「……ああ。」




ノアは震えながらベスを見上げる。


「……ベス。」


まだ涙で顔はぐしゃぐしゃだった。


それでも、その小さな声には安心が滲んでいた。


ベスは優しく笑う。


「もう大丈夫。」


「絶対に守る。」


ノアは何度も頷く。


「……うん。」


リシアはそんな二人を見て、小さく微笑んだ。




その様子を見ていた群れの長が、ゆっくりとベスへ視線を向ける。


鋭い瞳は左腕だけを見つめていた。


そして――


一歩だけ後ろへ下がる。


まるで、その力を知っているかのように。


ベスは剣を構え直す。


群れの長も折れた剣を握り締めた。


風が二人の間を吹き抜ける。





















決着は、まだ終わっていない。

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