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バル  作者: 隣の猫
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ラグニル



ガァァァッ!!


低い咆哮が荒野へ響く。


赤茶色の毛を逆立てた巨大な猿が、大地を蹴った。


「速い!」


レオンが大剣を構える。


ドォン!


振り下ろされた拳を受け止めた瞬間、足元の地面が砕け散る。


「ぐっ……!」


その怪力に思わず歯を食いしばる。


「一体じゃない!」


アイラが叫ぶ。


木の上。


岩陰。


さらに五体。


猿たちは連携するように灰鷹を囲み始めた。




「ノアを中心へ!」


ガルドの指示が飛ぶ。


団員たちは素早く陣形を組む。


リシアがノアを後ろへ下がらせる。


ノアは震えながらも頷いた。


「うん……!」




ベスの前へ、一際大きな猿が現れる。


全身に無数の傷。


右目は潰れ、左の牙だけ異様に長かった。


灰猫が鼻を鳴らす。


「……群れの長じゃな。」


赤牙をむき出しにしながら、猿はゆっくりと胸を叩く。


ドン!


ドン!


ドン!


その音へ応えるように、他の猿たちも一斉に雄叫びを上げた。


「知能があるぞ。」


ガルドが低く呟く。


「油断するな。」




次の瞬間。


長が腕を振り上げる。


それが合図だった。


猿たちが一斉に飛び掛かる。


「来た!」


アイラの矢が一体の肩を射抜く。


しかし怯まない。


別の猿が木を蹴り、高く跳び上がる。


「上!」


ベスは咄嗟に剣を振るう。


ガキィン!


爪と剣が激しくぶつかる。


その隙を狙い、横からもう一体。


「ベス!」


レオンが割って入り、大剣で猿を吹き飛ばす。


「一人で相手するな!」


「悪い!」


ベスはすぐに体勢を立て直した。




戦いを見つめるノアは、小さく息を呑む。


「すごい……。」


リシアは微笑みながらも視線は戦場から離さない。


「まだ終わってないよ。」


その言葉通りだった。


長は戦わない。


後ろでじっと様子を見ている。


まるで仲間へ指示を出しているようだった。


ガルドも気付く。


「あいつが指揮を執っている。」


「ベス!」


「長を狙え!」


「了解!」




ベスは一気に地面を蹴った。


猿たちの間を駆け抜ける。


長との距離が一気に縮まる。


だが、その瞬間だった。


長は不敵に口角を上げた。


「……?」


ベスの背筋へ嫌な汗が流れる。


次の瞬間。


ガサガサガサッ!!


背後の茂みから、さらに十数体もの猿が飛び出した。


「増援!?」


レオンが目を見開く。


灰猫はため息をつく。


「最初から待ち伏せじゃ。」


ガルドは剣を握り直した。
























赤牙の群れは、最初から灰鷹を狩るつもりで待ち構えていたのだった。

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