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バル  作者: 隣の猫
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エルシオン



翌朝。


朝日が壊れた村を照らしていた。


灰鷹は村の外れに立っていた。


村人たちを一つ一つ丁寧に埋葬し、小さな墓を作り終えたばかりだった。


リシアは静かに祈りを捧げる。


誰も言葉を発さない。


乾いた風だけが墓標を優しく揺らしていた。




少女は二つ並んだ墓の前へ立つ。


昨日よりも少しだけ落ち着いた表情だった。


「お父さん。」


「お母さん。」


「行ってきます。」


小さく頭を下げる。


振り返ると、ベスたちが静かに待っていた。


少女は少しだけ戸惑いながら歩き出す。


ベスは優しく問いかけた。


「君の名前を聞いてもいいか。」


少女は少し俯く。


そして、小さな声で答えた。


「……ノア。」


「ノアっていいます。」


ベスは穏やかに笑う。


「俺はベス。」


「よろしく、ノア。」


レオンはしゃがみ込み、笑顔を向ける。


「腹減ってないか?」


ノアは小さく頷く。


レオンは荷物から干し肉を取り出した。


「ほら。」


ノアは恐る恐る受け取る。


「……ありがとう。」


小さく微笑んだ。


それは村を出てから初めて見せた笑顔だった。



歩き始めてしばらく。


ノアはリシアの隣を歩いていた。


「リシアさん。」


「どうしたの?」


「どうして助けてくれたの?」


突然の質問だった。


リシアは少しだけ空を見上げる。


「助けたかったから。」


「それだけだよ。」


ノアは首を傾げる。


「危なかったのに?」


「うん。」


「でも、助けたいって思ったの。」


ノアはその言葉を何度も胸の中で繰り返していた。




その時だった。


灰猫が耳を動かす。


「止まれ。」


全員が足を止める。


ガルドも周囲を見渡した。


「どうした。」


灰猫は前方の森を見つめる。


「……嫌な気配じゃ。」


次の瞬間。


ガサッ!


草むらから黒い影が飛び出した。


「来るぞ!」


ベスが剣を抜く。


しかし現れたのは壊人ではなかった。


全身を赤茶色の毛で覆われた、大型の猿だった。


鋭い牙。


異様に長い腕。


真っ赤な瞳。


その後ろからもう一体。


さらにもう一体。


木々の上にも影が揺れる。


レオンは大剣を肩へ担ぎ、口角を上げた。


「今度の相手は猿か。」


ガルドは静かに剣を構える。


「油断するな。」


猿たちは低く唸りながら、灰鷹を取り囲み始める。


壊人だけではない。




















この壊れた大陸では、魔物までも姿を変えていた。

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