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バル  作者: 隣の猫
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156/417

アルダニル



ドゴォォォォン!!


凄まじい衝撃がグリムファングを襲った。


船体が大きく跳ね上がる。


甲板にいた団員たちは次々と転がった。


「掴まれ!!」


ガルドの怒号が響く。


バキバキッ!!


嫌な音を立てながら船底が岩礁へ乗り上げる。


マストが大きく軋み、帆が激しくはためいた。


「ベス!」


「舵を離せ!」


「はい!」


ベスが舵輪から飛び退く。


次の瞬間。


ドォン!!


二度目の衝撃。


グリムファングは完全に岩礁へ乗り上げ、その場で動きを止めた。


荒れていた海も、まるで何事もなかったかのように静まり返る。




「全員無事か!」


ガルドの声に、あちこちから返事が返ってくる。


「大丈夫です!」


「こっちは平気!」


「怪我人一名!」


リシアはすぐに負傷した団員のもとへ駆け寄る。


「安心してください。」


「骨は折れていません。」


ベスは立ち上がり、船体を見回した。


船首は岩へ食い込み、船底には大きく亀裂が走っている。


「……ひどいな。」


アイラも静かに頷いた。


「このままでは航行は無理です。」




レオンは船の縁から海を覗き込んだ。


「でも沈んでねぇな。」


ガルドも船底を確認する。


「完全には壊れていない。」


「修理すれば、また動く。」


その言葉にベスは少しだけ安心した。


グリムファングは失われたわけではない。


今は眠るだけだ。




ガルドは周囲を見渡した。


「荷を降ろす。」


「食料、水、武器を優先。」


「必要最低限だけ持つ。」


団員たちは一斉に動き出す。


樽を降ろす者。


荷袋を運ぶ者。


武器をまとめる者。


誰も文句は言わない。


それぞれが自分の役目を果たしていく。




レオンは船首を軽く叩いた。


「悪いな。」


「せっかく仲良くなったのによ。」


ベスも船体へ手を添える。


「必ず戻る。」


「今度は、自分たちの手で直して。」


「また一緒に海を走ろう。」


潮風が黒い帆を静かに揺らした。


まるで船が応えているようだった。




荷運びを終えた頃。


灰猫が船から軽く飛び降りる。


砂浜へ着地すると、大きく伸びをした。


「ふぅ。」


「やっと地面じゃ。」


レオンが笑う。


「猫、お前……。」


「船酔いしてたのか?」


灰猫は鼻を鳴らした。


「揺れるのは好かん。」


「歩く方が楽じゃ。」


その一言に団員たちから笑いが漏れる。


張り詰めていた空気が少しだけ和らいだ。




ガルドは南を見据える。


赤茶けた大地。


乾いた風。


照りつける灼熱の太陽。


そして、遥か彼方には霞む岩山。


アイラが地図を広げる。


「ここは予定していた港ではありません。」


「潮に流されました。」


「港までは、およそ三日。」


ガルドは静かに頷く。


「なら歩く。」


「目的は変わらん。」


ベスはフェンリルへ手を添えた。


「行こう。」


灰鷹は荷を背負い、一歩を踏み出す。


その足跡が、誰も踏み入れなくなった灼熱の大地へ刻まれる。


真実によって壊れた世界。






















その長い旅路が、今、始まった。

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