表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バル  作者: 隣の猫
PR
152/430

アシメア



出航から二日。


グリムファングは順調に南へ進んでいた。


最初はぎこちなかった操船も、少しずつ板についてくる。


「右舷、風が変わる!」


見張りの団員が叫ぶ。


「帆を少し緩めろ!」


ベスの指示に団員たちが素早く動く。


黒い帆が風を受け、船は滑るように海を進んだ。


アイラは航海日誌へ印を付ける。


「もう港の近海は抜けました。」


「ここからは完全な外海です。」


ベスは頷く。


「順調だな。」


その時だった。


ガタンッ。


船体が小さく揺れた。


レオンが首を傾げる。


「岩か?」


次の瞬間。


ドンッ!!


今度は大きな衝撃。


海面が大きく盛り上がる。


「来るぞ!」


ガルドの声が響いた。


ザバァァァァッ!!


巨大な影が海から飛び出す。


全身を青黒い鱗に覆われた海竜だった。


長い胴体をくねらせ、鋭い牙を剥く。


「海の魔物!」


団員たちが一斉に武器を構える。


しかし海竜は船へ近付きすぎている。


弓では狙いにくい。


ベスは舵を握る。


「船をぶつけるな!」


「距離を取る!」


グリムファングが大きく旋回する。


その時。


レオンが船の側面で足を止めた。


「……おい。」


皆が振り向く。


レオンは大きな鉄の筒を指差していた。


「これ。」


「もしかして……。」


「大砲じゃねぇか?」


全員が固まる。


ベスも目を丸くする。


「そういえば付いてたな……。」


レオンは目を輝かせた。


「撃とうぜ!」


アイラが呆れる。


「そんな簡単に言わないでください!」


灰猫がマストの上から欠伸をする。


「火薬も入っとる。」


「使えるぞ。」


レオンは満面の笑みになった。


「よっしゃあ!!」


団員たちと力を合わせ、大砲へ砲弾を運ぶ。


火薬を詰める。


砲弾を押し込む。


「準備できた!」


レオンが叫ぶ。


ベスは舵を切る。


「アイラ!」


「狙えるか!」


アイラは海竜の動きを見つめる。


「もう少し!」


「……今です!」


レオンは導火線へ火を付けた。


「ぶっ飛べぇぇぇ!!」


ドォォォォォン!!


轟音が海へ響く。


凄まじい反動でレオンが尻もちをついた。


「いてぇ!」


砲弾は一直線に飛び――


海竜の鼻先へ命中した。


ゴォォォォッ!!


驚いた海竜は大きく身体を反らし、そのまま海へ潜っていく。


静寂。


数秒後。


レオンが立ち上がる。


「逃げた!」


「俺たち勝ったぞ!」


甲板中から歓声が上がる。


団員たちが互いに肩を叩き合う。


アイラは苦笑した。


「偶然とはいえ……。」


「当たりましたね。」


ベスも笑う。


「大砲って凄いんだな。」


ガルドは腕を組んだまま静かに言う。


「一発で浮かれるな。」


「次は、こちらを狙ってくる敵もいる。」


その言葉に全員の表情が引き締まる。


だが。


レオンだけは再び大砲を撫でていた。


「もう一回撃ちてぇなぁ。」


灰猫は頭を抱えるように前足で顔を覆う。


「……やれやれ。」


「面倒な砲手が生まれてしもうた。」


甲板には笑い声が広がる。























その笑いを乗せながら、グリムファングは青い大海原を南へと進み続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ