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バル  作者: 隣の猫
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フェリシュ



街へ戻った灰鷹は、久しぶりに肩の力を抜いていた。


鍛冶屋を出たガルドは、新しい剣を腰に差して歩く。


その頭の上では、灰猫が丸くなって眠っていた。


「……まだ乗ってる。」


ベスが苦笑する。


レオンは吹き出した。


「団長、そのまま街歩くんですか?」


「ああ。」


「降りん。」


ガルドは諦めたように答える。


頭の上から猫が片目だけ開く。


「心地よい。」


「絶対、歩くの面倒なだけだろ。」


レオンが呆れる。


「そうじゃ。」


猫は悪びれもせず答え、また目を閉じた。


アイラが肩をすくめる。


「ずいぶん懐かれましたね。」


「懐かれてはおらん。」


「うむ。」


「懐いてはおらん。」


二人の返事が重なる。


レオンは腹を抱えて笑った。


「もう夫婦みたいじゃねぇか!」


「誰がじゃ。」


「誰がだ。」


また声が重なる。


街を歩く人々まで思わず笑みを浮かべる。


戦い続きだった灰鷹に、ようやく穏やかな時間が戻っていた。




その夜。


宿では珍しく全員が同じ卓を囲んでいた。


焼きたてのパン。


温かなスープ。


香草の香りが漂う肉料理。


レオンは勢いよくパンへかぶりつく。


「やっぱ飯は最高だ!」


「落ち着いて食べなさい。」


アイラが呆れ顔で水を差し出す。


リシアは静かに笑いながら皿を配っていた。


ベスはその光景を見渡し、小さく息を吐く。


こうして皆で食卓を囲めることが、どれほど幸せなのか。


今なら分かる。


ガルドは黙って食事を続ける。


頭の上の灰猫だけは、気持ちよさそうに眠ったままだった。


「起きなくていいのか?」


ベスが尋ねると、猫は目も開けずに答える。


「後で食う。」


「猫ってそんな自由なんだな……。」


「儂だけじゃ。」


思わず笑いが起こる。


その笑い声は宿いっぱいに広がっていった。




翌朝。


窓から差し込む朝日に、街はいつも通り目を覚ます。


市場には店が並び、人々の活気ある声が響いている。


誰もが、今日も平和な一日が始まるものだと思っていた。


その時だった。


遠くから、鐘の音が響く。


カン――


カン――


カン――


ゆっくりと。


だが確かに、街中へ鳴り渡る警鐘。


宿の中にいた全員が顔を上げた。


レオンが眉をひそめる。


「……何だ?」


ガルドは静かに立ち上がる。


新しい剣へ手を添えた。


灰猫も、その頭の上でゆっくりと目を開く。




















黄金の瞳が、港の方角をじっと見つめていた。

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