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バル  作者: 隣の猫
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セレフィア



ガルドは止まらない。


灰色の瘴気を纏ったまま、一直線にベスへ駆ける。


「させるか!」


レオンが飛び込む。


大剣を振り抜き、真正面から受け止めた。


轟音。


床が砕ける。


だが、押し返せない。


ガルドは静かに重心をずらした。


その一瞬だった。


レオンの身体が大きく泳ぐ。


「しまっ……!」


柄が脇腹へ触れる。


レオンは勢いのまま吹き飛び、石柱へ背中を打ち付けた。


それでもガルドは見向きもしない。


狙いは変わらない。


ベスだけだった。




「まだよ!」


アイラの矢が走る。


一本。


二本。


三本。


死角から放たれた矢は、すべて剣の腹で弾かれた。


火花が散る。


ガルドの足は止まらない。


ベスとの距離が、さらに縮まる。




ベスは歯を食いしばる。


身体が重い。


立て。


立たなきゃ。


左腕のフェンリルを支えに、膝を起こす。


だが、間に合わない。


ガルドの剣が振り上げられる。


その刹那――。


キィィン!!


細身の剣が滑り込んだ。


リシアだった。


一撃を流す。


返す間もなく二撃目。


さらに流す。


三撃。


四撃。


五撃。


ガルドの剣は止まらない。


リシアも止まらない。


半歩。


半歩。


紙一重で剣筋を逸らし続ける。


その足は、決して一歩も退かなかった。




ガルドの剣が速くなる。


リシアの呼吸も速くなる。


それでも受け流す。


腕が震えても。


足が悲鳴を上げても。


ただ仲間を守るためだけに。




その背中を見ながら、ベスはゆっくり立ち上がる。


レオンも大剣を拾う。


アイラは最後の矢を番えた。


三人が、再び構える。


リシアが繋いだ時間だった。




「ァァァッ!」


ガルドの咆哮が響く。


灰色の瘴気が一気に膨れ上がった。


剣速が変わる。


今まで見えていた剣筋が、消える。


「っ!」


リシアの剣が初めて遅れた。


一閃。


細身の剣が高く弾かれる。


もう一閃。


剣先が真っ直ぐリシアへ迫る。


誰も間に合わない。


その時だった。


















「……ニャ。」


















灰猫が、ふらりと二人の間を歩く。


まるで散歩の途中だった。


ガルドの剣が止まる。


右目が揺れる。


「……逃げろ。」


掠れた声。


ガルド自身の声だった。


リシアは迷わず身を引く。


次の瞬間。


灰色の瘴気が再びガルドを飲み込む。


右目から光が消える。


亡霊の剣士が、ゆっくりとベスへ向き直った。


ベスはフェンリルを強く握る。


その瞳に、もう迷いはない。


「団長。」


静かな声が地下神殿へ響く。

























「……もう、終わらせます。」

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