表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バル  作者: 隣の猫
PR
131/417

ヴェリス



崩れた岩壁の向こう。


ガルドは何度も剣を振るっていた。


岩は砕けない。


「クロム!」


叫びだけが地下神殿へ響く。


しかし返事はない。


祭壇の前で、クロムは静かに立ち尽くしていた。




黒い人影は、一歩も動かない。


ただクロムを見つめている。


「知りたいか。」


その問いだけが響く。


クロムは目を閉じた。


「……知りたい。」


「なぜ世界は争い続ける。」


「なぜ神は人を救わない。」


「俺たちは何を守っている。」


その声は震えていた。


恐怖ではない。


答えを求め続けてきた、一人の騎士の迷いだった。




ガルドは岩を殴り続ける。


拳から血が流れる。


「聞くな!」


「戻って来い!」


クロムはゆっくりと首を横へ振る。


「ガルド。」


「俺は知りたいだけなんだ。」


「世界を守るために。」


「答えが必要なんだ。」




黒い人影は静かに口を開く。


「答えはある。」


「だが。」


「真実には資格が要る。」


クロムは眉をひそめる。


「資格?」


「資格なき者が真実を知れば。」


「心は耐えられない。」


「真実は、人を壊す。」


地下神殿が静まり返る。


その一言だけが重く響いた。




クロムは拳を握る。


「それでも。」


「知らなければ守れないものがある。」


黒い人影は初めて小さく頷いた。


「ならば。」


「見せよう。」


「資格なき者が見るべきではない景色を。」




その瞬間。


黒い影が祭壇を包み込む。


クロムの視界が闇に染まる。


声にならない叫び。


光。


闇。


崩れゆく空。


泣き叫ぶ人々。


砕ける大地。


星々が落ちる光景。


そして――


人ではない”何か”が、世界を見下ろしていた。


「……ぁ。」


クロムの身体が震える。


瞳から涙がこぼれる。


「こんな……。」


「こんな世界だったのか……。」




「クロム!」


ガルドの叫びが響く。


その声で我に返る。


クロムは祭壇の前へ膝をついていた。


呼吸が乱れている。


全身から汗が噴き出す。


黒い影は静かに離れていく。


「まだ終わりではない。」


「お前は耐えられなかった。」


「だから。」


「壊れ始める。」


その言葉と同時に。


クロムの左腕へ、一本の黒い筋が浮かび上がった。


「……っ!」


激痛が走る。


クロムは腕を押さえ、苦しそうに息を吐く。




岩壁の向こうで、ガルドはようやく亀裂を見つける。


「もう少しだ!」


全力で剣を叩きつける。


岩壁が軋む。


クロムはその音を聞き、ゆっくりと顔を上げた。


その瞳はまだクロムのものだった。


だが、その奥には消えかけた灯火のように、小さな黒い揺らぎが宿っていた。


「ガルド……。」


助けを求めるようなその声は、次の瞬間。


苦痛の叫びへと変わる。


地下神殿に響く絶叫。


その声を聞いたガルドは、本能で理解した。






















もう時間がない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ