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バル  作者: 隣の猫
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アルダフェラ



翌朝。


街はいつもと変わらぬ賑わいを見せていた。


広場では楽団が演奏し、人々は笑顔で行き交う。


しかし、その光景は灰鷹の目には映っていなかった。


「団長を探そう。」


ベスの一言に、全員が頷く。




「まずは情報を集める。」


アイラが街の地図を広げる。


「虚無の使徒が目立たず移動できる場所……。」


「港、地下水路、それと古い遺跡。」


レオンは拳を握る。


「片っ端から探せばいい!」


「それじゃ時間がかかります。」


リシアが静かに首を振った。


「団長を知る人を探した方が早いかもしれません。」


ベスも頷く。


「団長はこの大陸を知っているようだった。」


「何か手掛かりがあるはずだ。」


灰鷹は二手に分かれ、聞き込みを始めた。




昼過ぎ。


ベスとリシアは、古びた鍛冶屋を訪れていた。


店内には古い剣や鎧が並んでいる。


店主は白髪交じりの老人だった。


「すみません。」


ベスはガルドの特徴を伝える。


老人は腕を組み、しばらく考え込んだ。


やがて、ゆっくりと目を見開く。


「……その男。」


「大剣じゃなく、片手剣を使うのか?」


「ああ。」


老人は深く息を吐いた。


「間違いない。」


「“灰色の剣士”だ。」


ベスとリシアは顔を見合わせる。


「灰色の……剣士?」


老人は懐かしそうに笑った。


「もう二十年ほど前だったか。」


「この街を、一人の剣士が救ったことがある。」




「その頃、この辺りは盗賊に荒らされていてな。」


「騎士団が来る前に、一人で飛び込んでいった若い男がいた。」


老人は棚に飾られた古い剣を見つめる。


「誰かに褒められようともせず。」


「名も名乗らず。」


「怪我だらけになりながら、街を守った。」


リシアは優しく微笑んだ。


「団長らしいですね。」


老人は首を横に振る。


「いや。」


「昔のあいつは、もっと鋭かった。」


「笑わない。」


「誰も近づけない。」


「そんな目をしていた。」


ベスは静かに息を呑む。


(昔の……団長。)




店を出た二人は、街角でレオンたちと合流した。


「こっちも収穫があった。」


アイラが一枚の古い地図を広げる。


「何人かに話を聞いたけど、皆同じ場所を口にしてた。」


地図の一点を指差す。


街外れ。


紅葉の森のさらに奥。


そこには小さく文字が書かれていた。


『旧騎士団修練場跡』


ベスが眉をひそめる。


「団長と関係があるのか。」


「分からない。」


アイラは首を振る。


「でも、虚無の使徒が目撃されたという話も、この辺りに集中してる。」




その時だった。


「お前たち。」


背後から声が掛かる。


振り返ると、一人の老騎士が立っていた。


年老いてはいるが、その背筋は真っ直ぐだった。


老騎士はベスたちを見つめる。


「今、お前たちの話が聞こえた。」


「ガルドを探しているのか。」


ベスは力強く頷く。


「ああ。」


老騎士は静かに目を閉じた。


「……そうか。」


「なら、私も協力しよう。」


ゆっくりと目を開く。


その瞳には、深い後悔が滲んでいた。


「私は、あいつに一生返せない借りがある。」


風が吹く。


赤く色づいた落ち葉が、三人の間を静かに舞い抜けた。


ベスはその老騎士を真っ直ぐ見つめる。


「団長のことを……教えてください。」


老騎士はゆっくりと頷く。


「ああ。」


「まずは、あいつがどんな男だったのかを話そう。」




















その言葉は、ガルドが封じ続けてきた過去への扉を、静かに開く合図だった。

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