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バル  作者: 隣の猫
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ザウラク



白狐の後を追い、灰鷹は雪深い山道を進んでいた。


不思議なことに、昨夜まで吹き荒れていた風は止み、空は穏やかだった。


白狐が歩く先だけは、まるで山そのものが道を譲るように静かである。


レオンは辺りを見回しながら小さく呟いた。


「昨日までとは別の山みてぇだ。」


「それだけ、この方の力が大きいのでしょう。」


リシアは白狐の背中を見つめながら微笑んだ。


白狐は振り返らない。


しかし、その耳だけが小さく動いた。


聞こえているのだと、誰もが分かった。




しばらく歩くと、一行は崖の上へたどり着く。


眼下には、果てしなく続く雪原。


遠くには港町が豆粒ほど小さく見えていた。


「ここまで登ってきたのか……。」


ベスは静かに息を吐く。


白狐は崖の先を見つめたまま、穏やかな声で語り始めた。


「この大陸では、人は自然と争いません。」


「山を敬い、雪を恐れ、生きる術を学んできました。」


アイラは静かに耳を傾ける。


「だから村々も、山へ必要以上に踏み入らないのね。」


「ええ。」


「山は命を与えます。」


「同時に、命を奪う場所でもあります。」




やがて白狐は足を止める。


雪に半ば埋もれた、小さな石碑がそこにあった。


苔一つない白い石。


風雪にさらされながらも、丁寧に手入れされている。


リシアがしゃがみ込む。


「お墓……?」


白狐は静かに頷いた。


「ここで命を落とした、守り人たちの碑です。」


「何百年もの間、多くの者がこの封印を守るために生き、そして眠りました。」


ガルドは帽子を取り、静かに黙礼する。


それに続き、灰鷹の仲間たちも頭を下げた。


ベスは石碑を見つめながら思う。


守られてきたのは封印だけではない。


そこに暮らす人々の未来もまた、多くの命によって守られてきたのだと。




歩き始めた白狐の隣へ、リシアがそっと並ぶ。


「……ずっと、一人で守ってきたんですか?」


白狐は少しだけ空を見上げた。


「一人ではありません。」


「想いは、代々受け継がれてきました。」


その言葉に、ベスはセグの姿を思い出す。


守る者は違っても。


その願いは同じなのだ。




やがて吹雪の向こうに、巨大な石造りの門がぼんやりと姿を現した。


幾千年もの風雪に耐えてきた門。


その先には、雪に包まれた壮大な神殿が静かに眠っている。


白狐は歩みを止め、振り返った。


黄金の瞳が、一人ひとりを見つめる。


「この先が、星詠みの神殿です。」


「ですが、その前に……。」


白狐は穏やかに微笑む。


「私は、あなたたちの覚悟を知りたい。」


冷たい風が静かに吹き抜ける。




















第二の封印を守る試練が、今まさに始まろうとしていた。

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