表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
53/57

第53話『キャンセルです! B連打B連打B連打!』

「……うーん……バトルがあってぇ……次に……いやでも待てよ」

「そうだ……うん、この流れは面白(おも)んないよなぁ」



 セレスが号令をかけるや否や、小凪は腕を組み、眉間みけんにしわを寄せてぶつぶつと考え込んでいた。


 かれこれ5分。

 七海の膝の上で、小さくうなっている。


 一方のセレスも、テーブルの上に頬杖をつき、小凪をじぃぃ……っと見つめている。



『……ふふふ』

『(こうやって、ゲームのことになると、一気に自分の世界に入ってしまうのは凪さんっぽいですね)』


『――――――』



「――え、ちょいちょいちょい」


「セレスちゃんまで、自分の世界に入らないでくださぁい」

「付き合いたてのカップルじゃないんだから」


「ロリ凝視罪ぎょうしざいで逮捕だよ?」

「ロリペナルティ、マイナス1点だよ?」



『はっ……!』

『ごめんなさい。私としたことが』



 セレスは幻影を断ち切るように、首をぶんぶんと振る。

 そして、小凪の視界に入るように、ゆっくり近づくと膝をついて優しく声をかけた。



『小凪さん♪』



「――んぇ?」

「あぁ、なに?」



『集中してるところすみません』

『良かったら、お話しながら一緒に考えましょっか♪』



「うーん」

「いいんだけど……ボクまだ、考えがまとまってなくて」


「……ごめん」



『ふふ、謝らなくていいんですよ』

『いいですか?』


『ゲーム開発というのは、みんなで創るものです!』

『意見を言い合うことで、考えもスムーズにまとまりますし、何より楽しいです!』


『私の大事な――えぇ、"師匠" も言っていました』

()()()()()()()()()()()()()()()()って』



「……遊び、ながら」


「……うん。分かった」

「やってみる」



『ありがとうございます♪』


『では、小凪さん』

『途中までで大丈夫なので、考えていたことを教えてください』



 そう言うと、セレスは小凪の顔の前で、小さく手を広げた。

 まさに幼稚園の先生のような暖かい雰囲気。



「まずは、ゲームコンセプトにもあるけど "バトル" がメイン機能だろ?」

「呪われた村とか歩いてたら、キモい敵が出てきて倒すやつ」


「"理想のキャラが敵をなぎ倒していく恋愛アクションホラー" だからな」

「んで、"キャラが" ってことは、装備ひろって付け替えたり、育てれたら楽しい」



 小凪は、目を閉じて身振り手振りしながら説明している。

 おそらく頭の中で、ゲームをしながら話しているのだろう。



『ふむふむ。"サバイバルアクション" ですね!』

『キャラの育成・装備があるのも同じ認識です』



「でも――」



『でも?』



「……()()()()()()()()()()



「小凪ちゃん小凪ちゃん」

「学校に好きな男の子とかいないの?」



『――!』



 唐突に七海なみがニョキっと出てきたかと思えば、小凪――8歳の恋愛事情のヒアリングが始まった。


 セレスも平静を装っているが、耳がぴくぴくと動いている。



「ん? おらんが」


「ゲーム、下手なやつばっかだし」

「なんで自分より下手なやつ、好きになるん?」


「――あ! でも、ママはめっちゃ強いぞ!」

「パパも……うまくはないけど強い!」


「だから、好きだ! うん!」



『小凪さん、それは恋愛では――』



「うん! うんうん!」

「分かるよ、小凪ちゃん!」


「自分より能力が低い人を好きになる理由、分からないよね!」



『――ちょ! ママは話をややこしくしないでください!』



「えー、ややこしくないよーぅ。ぶーぶー」

「恋愛において、"能力の高さ" は着火剤でもあるんだから」


「あ! 信じてない顔ー!」

「わかりましたわかりましたー」


「それなら、解説しましょう!」

「天才脳科学者でもある、この私がねっ♪」



 七海は、ビシッと腕を上げ、指をパチンと鳴らす。

 置いてあるホワイトボードが、一気に文字で埋め尽くされた。



「えっとねぇ、恋愛の定義っていうのは――」



『すとーっぷ!』

『キャンセルです! B連打B連打B連打!』


『どうせまた、"愛の三角理論" とか "ノルアドレナリン" とか専門用語ズラズラ並べて、気持ちよくなるつもりでしょう!』

『させませんよ!』


『恋愛っていうのは……その……そんな科学的なモノじゃないです』

『もっとこう直感的というか、本能というか……ごにょごにょ』



「へぇー、ふぅーん」

「セレスちゃんの口から、"本能" かぁ~」



 セレスの目の前に、にたぁっと笑う七海の顔があった。

 その笑いは、セレスにとっては "危険察知アラート" のサインである。



「むふん♪ さぁ、小凪ちゃん」

「恋愛マスターの~、セレス先生が~、恋愛について教えてくれるって~」


「一緒に教えてもらおうね♪」

「ささ! セレス先生! よろしくお願いしますっ!」



 セレスに、純真無垢じゅんしんむくな小凪の視線が突きささる。

 もちろん、逃れる術はない。



『うぐっ……小凪さんを盾にするとはなんて卑怯な』

『――――仕方、ありませんか。はぁ』



 セレスは深呼吸して、ゆっくりと口を開く。

 恥ずかしいのだろう。視線は少しだけ右に寄っている。



『……えー、恋愛というのはですね』

『いつも守ってくれたり、ひっぱってくれたり…………かっこいいなぁって気持ちになったら最後。それがいつか――』


『さわり、たいとか……さわってほしい、とか……そういう気持ちになって。ぐぅぅってのぼってきたなぁってなった時には、独り占めしたいとかの気持ちになってですね』


『えとえと、あとは近づくだけでドキドキしたり……いい匂いでずっと一緒にいたいなぁとか…………デュフ……養ってほしいとか』


『あ、でもでも、働けって言われたら働きますし……相手が働けなくなったとしても一生面倒みるくらいの甲斐性かいしょうはあるつもり、です』

『あと…………ちょっとくらいすごいこと要求されても、許容できるっていうか……なーんてなーんて』



「……う~ん? わ、わからん」

「恋愛って難しいんだな」



『ふふ。そう思ってる時が、私にもありました』


『難しくありませんよ』

小凪こなぎさんも大凪おおなぎさんなったらわかります♪』



「ちょっとくらいすごいことってなんなん?」



『センシティブです……♡』



「ふぅーん。セレスちゃん、そんなこと考えてたんだぁ」

「そっかそっか、ふぅーん」



『……あっ! いえ、これはその……言葉のあやというか』



「えー、セレスちゃんは後で職員室にくるように」

「ゆーっくりお話しようね」



『――あぅ』



 七海はニッコリと黒い笑顔を返すと、場の空気を切り替えるためにパンと手を打った。



「はい! セレス先生、ありがとうございました!」


「ここで分かったこととしては、()()()()()()()()()()()()()()ということですね」

「このままだと、ゲームサイクル決めは進まないのでっ!」


「恋愛系部分のメイン機能は、"セレスちゃんの宿題" にしましょう!」

「ここに関しては、セレスちゃんの腕の見せ所だね♪」



『あ、はいっ! が、がんばります!』



「ふふ、よろしくね」

「それじゃあ、私はマスターAIの方の仕事でもしてこようかな~」


「セレスちゃんは、このままここで宿題やっていくの?」



『はい! 私は引き続き居残りで考えようと思います!』



「セレスちゃんは頑張り屋さんだね♪ いい子いい子」



『えへへ。ママもお仕事頑張ってください』

『いってらっしゃい』



 七海はセレスのひたいにそっとキスをして、手を振りながら軽やかに出ていった。


 静寂が戻ったその瞬間、小さな指がセレスの服をちょん、ちょん――と引っ張った。



「セレス……その、なんだ……役に立てんくてごめん」



『ふふ、謝らないでください♪』

『得意なことと、不得意なことを補い合うのもゲーム開発の醍醐味だいごみですよ』


『ブランはシナリオを書くことが得意ですし、エンプはイラストを描くのが得意、ヌルはプログラムを作るのが得意です』

『みんなの得意の結晶が、素敵なゲームになると思うんです』


『今回は私が恋愛が得意だった、というだけです。ふふん』

『私がズバッと面白い案を考えてきますので、大船に乗ったつもりで楽しみにしていてください』



挿絵(By みてみん)



「あはは。うん! 楽しみにしとく!」



『あ、そうです』

『待ってる間、ヒマだと思いますので、ブランに連絡しておきますよ!』


『ゲームでもして待っていてください♪』



「……糸目のねーちゃん」

「――あ!」


「うんうん、そうだな」

「ボクちょっと遊んでくるな! ありがとー」



『――?』

『はい、いってらっしゃい』


『あっ、そんなに走ると転びますよー!』



―第54話につづく―

どうも、皆さん!せーぶうわがきです!


はてさて、ゲームサイクルを決めるにあたって思わぬ穴が眠っていましたね。

セレス以外、恋愛したことがないという。

ん?七海は18歳なんだから恋愛くらい知ってるだろって?

それはですね、彼女の発言や仕草が全てを物語ってます(´・ω・`)ヨロシクオネガイシマス


実は恋愛については、ゲーム業界でもしばしば問題になっているのを割と見ます。

例えば、シナリオライターで可愛い女の子のセリフや設定は可愛く書けるんですが、デートシーンになると一気に深みがなくなったりですね。

ヒアリングしてみると、「実は恋愛経験がなくて」という。


本当、ゲーム業界は様々な人、様々なシーンに出会えるので面白いことばかりです(●´ω`●)

この作品を通して、そういうところが少しでも伝わってくれたらなぁと思っております。


というところで、今回のあとがきはここまで!

皆さん、第54話でお会いしましょう♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ