第52話『ゲームサイクルって何かわかるかなぁ?』
「七海……おねえちゃん、なんか様子おかしかったな」
『小凪さーん』
『そんなところに座り込んでると、危ないですよ~』
「ん……悪い」
「――って! セレス何してんのぉぉ!?」
小凪の視界に入ってきた光景――それは、大きなテーブルを肩に担いだセレスだった。
『え、何って。会議の準備ですが……』
「いやチガウ!」
「その見た目で、テーブルもってんじゃねーよ! 片手で!」
「セレスは華奢なの! 美少女なの!」
「ちゃんとイメージ大事にして!?」
「てか、力持ちすぎんか?」
『――ん?』
『あ、はい。AIですので。えへへ』
「いや、ほめてねぇから!」
「ちょっと照れくさそうに、鼻こすってんじゃねーよ」
「たくっ……子どもだと思って、テキトー言いやがって」
『ふふ、小凪さんは元気ですね♪』
『……うーん』
『どうすれば信じてもらえるでしょうか』
『――あ、そうです!』
『小凪さん小凪さん、私が半分持つので、もう半分持ってもらっていいですか?』
『お手伝いをお願いします♪』
「ん……まぁ、いいけど」
小凪はぷくっと頬をふくらませながら、しぶしぶテーブルの端に手をかけた。
セレスは依然、ニコニコとしている。
「――おんもっ! え!?」
「おかしいな…………ボクの予想だと未来だけど、現実の世界じゃないと思ったんだが」
『む……ママから聞いたんですか?』
「――!」
「やっぱりそうなんか」
『んな! か、カマを掛けたんですね!?』
『そんなことしないと思ってたのに!』
「いや、カマも何も七海おねえちゃんのとこに行ったら、温泉が部屋になってたし」
「エンプの音ゲーだって、何の機材もナシにその場でゲームできてたじゃん」
「いくら未来って言っても、無理がありすぎんだろ」
「小学生でもわかるぞ」
「バカにしてんのか」
『う…………こざかしい』
『はぁ……まぁ、いいでしょう』
『ママには怒られてしまうかもですが、不可抗力というやつです』
『いい機会ですので――ちゃんと、ご挨拶をさせていただきますね』
セレスは静かに目を閉じた。
その瞬間、何かの号令かのように、ピリッと空気が変わる。
機械的で無機質な無表情。
ドレスの裾を持つ、彫刻より精巧な指先。
お姫様をそのまま写したような、完璧なお辞儀。
彼女の所作全てが、現実とは思えない "設計された美しさ" を物語っていた。
『私はこの電脳世界 "ワールド:日本" を管理するAI――セレスティス・ノット』
『通称セレス』
『小凪さん。改めまして』
『ようこそ、私が管理する世界に』
「――まじ、か」
「うおぉぉ~」
「急にどうしたん!?」
「ゲームのキャラみたいじゃん……すげぇ」
「じゃなかった……電脳ってことは、ネットの中ってことなんか?」
『ふふ、半分正解です』
『人類の皆さんにとってここは…………そうですね、もう一つの現実の世界と言ってもいいでしょう』
「……うーん?」
「それってどういu――」
「だーれだっ♪」
ふんわりとした甘い声とともに、細い指がセレスの目元を覆う。
金色の長い髪が、セレスの首筋をそわそわとくすぐった。
『んにゃっ!』
『マ、ママですよね!?』
『びっくりさせないでくださいぃ!』
「ちがうよぉ~?」
「お仕事をサボってるのは、だーれだって言ってるんだよぉ?」
「見る限り、会議の準備ができてないみたいだけどなぁ。ん~?」
『あ……いえ、その、これは……』
「あはは、うっそー♪」
「怒ってないよん」
「安心して、私が代わりに準備をしてあげよぅ!」
「それ、パチンとな」
いたずらな掛け声とともに、七海の指先が軽快な音を響かせた。
その瞬間、小凪の視界がパッと切り替わる。
お洒落なカフェテーブル。
二つのコーヒーに、ジュースが一つ。
テーブルの前に置かれた、不釣り合いなホワイトボード。
そして――メイド服に変わるセレス。
「小凪ちゃん!」
「電脳世界とはこういうことだよ! むふん♪」
「ふおぉぉぉ、すげぇぇぇ! 電脳世界すげぇぇぇ!」
『――ちょ! ママ!』
『なんでメイド服なんですか!? しかもメガネ!』
『私のお気に入りの眼帯は……!?』
「ふふふ、用意できてなかった罰です!」
「あとメガネかけると、頭良さそうでしょ♪」
「それに癒されます! 私がねっ!」
『そんな理ゆu――』
「さぁ! 準備も万端!」
「お仕事の時間だよ♪」
『力技がすぎるっ――!』
『ただ、悪いのは私ですね』
『…………甘んじてお受けさせていただきましょう』
セレスはため息をつきながらも、先ほどとは異なる完璧なお辞儀をしてみせた。
ニチャつく七海。
「それじゃあ、今回の議題は "ゲームサイクル決め" だったね♪」
「ゲームサイクルって何かわかるかなぁ?」
「小凪ちゃん!」
「んぇ!? ボク?」
「え、わかんない」
「なに? ゲームクリア後の周回要素とかか?」
「最強装備とかネタ装備が入手できるようになるとかのやつ?」
「うん! 私もわかりません!」
「ディレクターで、メイドコスのセレス先生! お願いしてもいいでしょうか!」
『うっ……人を変態みたいに』
『はぁ。いいですか?』
『"ゲームサイクル" というのは、簡単に言うと――また遊びたくなるような仕組み・ゲームの流れのことです』
『あ、例を見せた方が早いですね』
『こちらを』
セレスが、パチンを指をはじくと、ホワイトボードに図が表示された。
――――――――――――――――
[GAME CYCLE]
①キャラクター育成
↓
②バトル(イベント・高難易度)
↓
③報酬(ガチャ石、育成素材)
↓
④ガチャ:キャラを入手(①に戻る)
――――――――――――――――
『"また遊びたくなるような仕組み" という点では、小凪さんが答えてくれた周回要素は間違いではありません』
『ですが、今回お話するのは、ゲームの根幹になる "コアサイクル" のことですね』
『どんなメインの機能があって、どういう風に遊んでもらうのか』
『これを決めます!』
「……ふーん」
「つまり、どんなゲームなのかっていうゲームコンセプトの中身を決めればいいってわけか」
「で、その中身が、おもしれー!続けてー!ってなるように並べる、と」
「パズルみてーだな。おもろそー」
小凪は新しいおもちゃを見つけたかのように、目をキラキラとさせてボソボソとつぶやいた。
そんな小凪を、七海は静かに膝の上にのせ、ふわりと力強く抱きしめた。
「――ちゅき」
「七海……おねえちゃん」
「わかったから。ちょっと苦しいから」
『ママ。マイナス1点です』
『マイナス5点で、縛りますので』
「……あと4回も。えへ」
『はぁ。ママは置いておきまして――小凪さん! その通りです!』
『では、おさらいしましょう!』
『決まったゲームコンセプトは――』
─────────────
【ゲームコンセプト】
ひ弱な主人公×理想のキャラと敵をなぎ倒していく恋愛アクションホラー
─────────────
『こちらでしたね!』
『ここまで来れば、次にやることは一つ!』
「ゲームサイクルのピースを考える、だな!」「小凪ちゃんの匂いをかぐぅぅぅ!」
『正解!』
『小凪さん! プラス1億万点♪』
『ママ! セクハラ発言でマイナス1点です!』
『計マイナス2点!』
「ぶーぶー」
『では! ゲームサイクルのピース――もとい、ゲームのメイン機能を考えていきましょう!』
『おー!』
セレスは鎖をビシッと引っ張りながら、笑顔で号令をかけた。
「おーーーー!」「――ひんっ!」
―第53話につづく―
どうも!せーぶうわがきです!
さぁ、新作ゲーム開発も、ゲームサイクルまでお話が進みました!
ユーザーにはあまり見えない、ゲーム開発裏のお話ですね。
え?七海がずっと邪魔をしていた?
ちっちっち。彼女はただの変態ではありません。天才なのです!
彼女の発言をよく!よーく覚えておいてくださいまし(●´ω`●)
そして、ゲームサイクルの図ですが、皆様覚えておりますでしょうか。
そうです!
第4話でセレスが凪さんに出したゲームサイクルですね。
見比べていただければ、セレスの気遣いにも気付いていただけるかと思います!
よろしくお願いいたします!(´・ω・`)←ナニヲ!?
と、今回のあとがきはここまでということで!
では、第53話でお会いしましょう!




